2012 Fiscal Year Annual Research Report
キラルな分岐型有機金属反応剤を用いる立体特異的クロスカップリングの開発
Project/Area Number |
23655082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378803)
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Keywords | 合成化学 / 結合形成 / 立体化学 / 遷移金属触媒 / 有機ホウ素化合物 / 立体特異的 / 立体反転 / 立体保持 |
Research Abstract |
不斉炭素中心での炭素-炭素結合形成において、立体化学の反転・保持を自在に制御可能な触媒反応を確立し、キラル分子のジアステレオマーを立体相補的に合成する有機合成方法論の創出を目的として研究に取り組んだ。平成24年度は、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目2.B-アルキル鈴木-宮浦カップリングに適用可能なホウ素反応剤の拡張」に関して、非ベンジル型ホウ素反応剤である1-(アセチルアミノ)-3-フェニルプロピルボロン酸エステルと臭化ベンゼンのカップリング反応を検討した。このホウ素反応剤は、平成23年度に実施した「研究項目1」のベンジル型ホウ素反応剤と比較して極めて不活性であり、同様の反応条件では全く目的生成物を与えなかった。パラジウム触媒の配位子構造、塩基、溶媒、反応温度を系統的に検討した結果、シクロヘキシルフェニルホスフィンを配位子に用い、フッ化セシウム存在下m-キシレン中145℃で反応を行うことにより、良好な収率で目的生成物が得られることを見出した。次に光学活性なホウ素反応剤を用いて検討を行ったところ、反応は立体反転を伴って進行するものの、生成物の鏡像異性体過剰率は大幅に低下することが明らかとなった。これを改善すべく検討を行った結果、ホウ素反応剤の窒素上のアシル基を嵩高くすることで、鏡像異性体過剰率の低下を軽減できることを見出した。 研究期間全体の成果:ベンジル型ホウ素反応剤のクロスカップリングにおいて、立体保持で炭素―炭素結合形成を行うためのホウ素反応剤構造と添加剤の効果を明らかとした。また、より不活性な非ベンジル型ホウ素反応剤を利用可能とする新しい触媒反応条件を確立し、立体特異的カップリングを達成するためのホウ素反応剤構造について知見を得た。研究期間内に「研究項目3.ジアステレオマーの立体相補的合成」の実施には至らなかったものの、得られた成果は今後の展開に資する。
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