2011 Fiscal Year Research-status Report
トランジスタ特性を持つ可溶性グラフェン類の革新的合成法創成への挑戦
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23655090
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70252591)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | C-H活性化 / 有機トランジスタ / アリール化 / グラフェン類 / オリゴアセン類 / アリールボロン酸エステル / 芳香族ケトン / 遷移金属錯体触媒 |
Research Abstract |
平成23年度は、遷移金属錯体触媒を用いたアセチルベンゼン類とアリールボロン酸エステルとのクロスカップリングによるオルト位炭素-水素結合のアリール化を利用した、縮合多環式炭化水素の合成を検討した。方法論として、1)芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合のアリール化、2)アセチル基のアルドール型脱水三量化を利用したベンゼン環の構築、3)ベンゼン環同士の脱水素型酸化反応によるπ共役系の拡張の3つの過程を経る手法の開発を検討した。 芳香環を一次元的に伸長させるために効果的な触媒を探索することを重点的に検討した。中でも、芳香族ケトンとアリールボロン酸エステルとのクロスカップリングで高い活性をもつルテニウム触媒を中心に反応条件の検討を行った。アセチルベンゼン類の2カ所のオルト位炭素-水素結合のアリール化は、様々なアリールボロン酸エステルを用いても達成することができた。次に、第二段階である生成物のアセチル基を利用した脱水三量化反応について検討を行った。酸条件下やアルカリ条件下など、様々な条件下でアルドール反応を検討したが、二量化段階で反応が停止してしまい、目的の生成物を得ることができなかった。アセチル基周辺の立体的込み入りが大きいため、3分子目の反応が進行しにくいと判断した。そこで、アリール化生成物の脱水二量体を合成し、それとアセトフェノンなどの立体的かさ高さが小さいケトンとの反応を行うことによりベンゼン環の構築を検討した。様々な組み合わせで検討を行ったが、現在までに目的の脱水アルドール反応を経るベンゼン環の構築が達成できる反応系の開発には至っていない。 平成24年度は、これまでの検討結果を基にして、さらなる反応条件の検討を行うことにより縮合多環式炭化水素を短工程で合成できる系の開発を目指す。また、合成した縮合多環式炭化水素を用いた有機電界効果トランジスタへの利用も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた芳香族ケトンのオルト位アリール化を効率的に行える系の開発は、計画通りに達成することができた。特に、オルト位炭素-水素結合が2カ所ある場合に、両方ともがアリール化された生成物が選択的に得られる。本研究では、1カ所のみを選択的にアリール化する反応条件を見出すことが、目的生成物を得るために重要である。現在までの検討で、芳香族ケトンとアリールボロン酸エステルとの反応に添加剤を加えることにより、ジアリール化体の生成を抑制できることを見出した。この反応条件を利用すれば、過去に報告されているような基質の構造や反応性を制御することなく、モノアリール体とジアリール体を選択的に作り分けることができる。このことは、本研究を遂行するために重要な成果である。 一方、アセチル基の三量化を経てベンゼン環を新たに構築する方法は、目的の化合物合成に適した反応条件が見出すことができていない。今後、様々な検討を行い目的の反応が進行する系の開発を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討では、芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合と芳香族ボロン酸エステルとのクロスカップリング反応を利用する方法では、アセチル基を利用した脱水型三量化反応はアリール基導入後に行う必要があった。前年度の検討により、アリール化後に三量化を行うのは立体的に不利となるため目的の反応が進行しないことが明らかとなった。そこで、今年度は他のアリール化反応の手法を開発し、アセチル基の三量化を行った後にアリール化を行い、グラフェン合成を行うことを目指す。 これらの検討に加えて、フッ素化溶媒を利用した抽出により目的の生成物を容易に単離できる系の開発を目指し、フルオロアルキル基をもつグラフェン類の合成を目指す。また、フルオロアルキル基には電子求引性があるため、電子受容能をもつ有機半導体特性を示す可能性があるなどの興味深い物性の発現が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究において、研究目的遂行に重要な過程であるアセチル基の三量化を進行させるための反応条件を確定することが需要な達成目標であった。そのために、同じ化合物を用いて様々な反応条件の検討を行うことに研究の重点をおいた。当初の研究計画で推定していたよりも、本過程を進行させることが困難であった。この過程を達成することが極めて重要であったことから、この問題点の克服を最優先課題とした。そのため、平成23年度に予定していた多様な化合物の遷移金属錯体触媒反応を利用した合成、ならびにそれらを用いたアセチル基の三量化反応、それに続く脱水素型酸化の検討を次年に行うことにした。これらの検討に用いる研究費を次年度に使うことにし、研究目的の達成をスムーズに行えるようにした。このような状況のもと平成24年度の研究では、平成23年度の研究のうち実施できなかった検討に必要な研究費と、平成24年度の研究として当初から予定していた研究計画を遂行するための研究費を合わせて使用することにより、本研究の研究目的を達成させることを目指す。平成23年度分と平成24年度分の研究費を合わせた2450千円を使用して、本研究を遂行する。研究費2,450千円のうち、消耗品の購入に2,250千円、旅費に200千円を使用する計画である。消耗品購入内訳:有機試薬(700千円)、無機試薬(100千円)、有機金属試薬(300千円)、重水素化溶媒(300千円)、ガラス器具(550千円)、SiO2/Si基板素子(300千円)旅費内訳:調査・研究旅費(100千円)、研究打合せ旅費(100千円)
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Research Products
(13 results)