2012 Fiscal Year Research-status Report
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23655092
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中野 環 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (40227856)
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Keywords | πスタック構造 / 導電性ポリマー / アニオン重合 / ラジカル重合 / チオフェン / 立体構造 |
Research Abstract |
パイスタック型導電性ビニルポリマーの合成を目的に研究を推進し、今回4-メチレンシクロペンタ[2,1-b;3,4-b']ジチオフェン(MCPDT)をモノマーとして用い、重合反応について検討した。その結果このモノマーをアニオン重合およびラジカル重合により高分子化することに成功した。研究を通じて、このモノマーは空気中の酸素と反応してビニル型でない構造を有する高分子を与えることが見出されたため、モノマーの保存・及び重合反応は窒素下で行う必要があることが分かった。アニオン重合およびラジカル重合のいずれでもπスタック型の高分子が得られたが、ラジカル重合体のほうが若干コンホメーション選択性が低いことが示唆された。加えて、ラジカル重合体はアニオン重合体に比べて良好な溶解性を示した。これは、わずかな構造の乱れによって分子鎖間の相互作用が弱くなったためと推定される。 加えて、高分子の溶解性や加工性をさらに向上させるためのメトキシエトキシ基を側鎖に導入したモノマーの合成を試みた。 さらに、新しいパイスタック型高分子として側鎖にメトキシエトキシ基を有するポリジベンゾフルベン誘導体の合成に成功した。この高分子は無置換体に比べてはるかに高い溶解性を示した。 こうして得られた各種ポリマーの1HNMR測定からパイスタック構造に由来する遮蔽効果によって、芳香族ピークの顕著な高磁場シフトが観測された。またUV-vis測定により、ユニットモデルに比べ吸収ピークの大きな浅色シフトが観測され、これも高分子のパイスタック構造を指示する結果であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標の一つである4-メチレンシクロペンタ[2,1-b;3,4-b']ジチオフェン(MCPDT)の合成に成功しており、重合反応により高分子を得ることに成功している。また、重合条件によって溶解性をある程度制御できることが明らかになり、導電材料を創成するうえでの重要な知見が得られている。 溶解性を大幅に向上させるメトキシエトキシ基を導入したMCPDT誘導体の合成はまだ達成していないが、この置換基を有するジベンゾフルベンポリマーの誘導体を合成し、この置換基が溶解性の大幅な向上に有効であることを見出しており、研究の方向性は明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新しいπスタック型高分子として合成した側鎖にメトキシエトキシ基を有するポリジベンゾフルベン誘導体の電子物性について検討する。酸化剤としてFe(III)ClO4あるいはSbCl5を加え、ドープした状態での吸収スペクトルを測定し、分子内電荷移動を示すホールレゾナンス吸収帯の発現を確認する。さらにドープした高分子を薄膜成型し、低効率を測定する。 加えて、解性を大幅に向上させるメトキシエトキシ基を導入したMCPDT誘導体の合成を引き続き試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メトキシエトキシ基を有するポリジベンゾフルベン誘導体の電子物性に用いる光学セル、石英版等の消耗品を購入する。また、メトキシエトキシ基を導入したMCPDT誘導体合成のための化学薬品、ガラス器具などを購入する。加えて、共同研究打ち合わせおよび情報収集等のための学会参加旅費に充てる。
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Research Products
(9 results)