2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23655093
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
覚知 豊次 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80113538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 敏文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80291235)
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Keywords | 有機分子触媒 / 立体選択的重合 / キラル / 生分解性ポリエステル / 生物由来資源 |
Research Abstract |
キラル有機分子触媒の重合反応およびポリマーの精密合成へ応用するため、23年度は先行実験としてジフェニルリン酸を触媒とし、3-フェニル-1-プロパノールを開始剤として用いたδ-バレロラクトンとε-カプロラクトンの開環重合を検討し、これらのリビング重合を確立した。次に、24年度ではキラル有機分子触媒を用いたラセミ体のモノマーの不斉選択重合を検討した。まず、β-ブチロラクトン(β-BL)の不斉選択重合による光学活性ポリブチロラクトン(PBL)の合成を目指し、りん酸水素(R)-(-)-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイルを触媒((S)-BNPA)としたβ-BLの開環重合を試みた。しかし、重合は進行したものの理論分子量と実験で得られた分子量は一致せず、SECトレースも多峰性となった。よって、リン酸触媒を用いたβ-BLの重合は可能であるが制御は困難であることが明らかとなった。次に、(S)-BNPAを用いたラセミ体のラクチド(DLLA)の開環重合を試みたところ、重合反応は完全に制御されたリビング重合で進行したが、DLLAの不斉選択は全く生じなかった。そこで、(S)-BNPAの3,3'-位に3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基やペンタフルオロフェニル基を導入したキラル有機分子触媒を用いてDLLAの開環重合を行ったところ、DLLAの高い不斉選択性が見られ、光学活性ポリラクチドが得られた。 以上、本研究の成果は、1)ジフェニルリン酸の用いたラクトンのリビング開環重合により高分子量のポリカプロラクトンおよびポリバレロラクトンの精密合成法を確立したことであり、さらに、2)キラルなリン酸触媒を用いることによりラセミ体のモノマーから光学活性なラクチドポリマーの効率よい合成に成功したこである。これらの成果はこれからの有機分子触媒を用いた高分子化学や高分子工業へ大いに寄与するものと思われる。
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