2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655101
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長尾 秀実 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30291892)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 自己組織化 / 引き込み現象 / 分子動力学シミュレーション / 高分子 |
Research Abstract |
本年度は様々な条件下での二原子分子の引き込み現象の分子動力学シミュレーションによる研究を実施した。 粒子数一定、体積一定、温度一定の条件下でのシミュレーション結果からは、分子密度が均一な高温状態では二原子分子振動の引き込み現象の観測は困難であった。一方、低温状態では二原子分子がクラスター化して、一部の少数分子クラスター内では分子振動に引き込み現象が観測された。引き込み現象発現条件の解析は現在行っている。また、粒子数一定、圧力一定、温度一定条件下でのシミュレーション結果からは、一時的かつ一部分子の振動数の引き込み現象のようなものが観測されているが詳しい解析を実施している。このシミュレーションでは系の体積時間変化と分子振動との関係性に注目している。すなわち強制引き込み現象の発現が誘起されている可能性がある。 以上の結果から振動数の温度、圧力及び相互作用依存性に関する引き込み現象の臨界条件が示唆されるものの明確な根拠、証拠を見いだせていない。マクロサイズで起こる引き込み現象は「相互引き込み」と「強制引き込み」に分けられる。相互引き込みでは近傍の影響によるものや全体場の影響がその原因となる(同一の周波数に引き込まれる)。一方、強制引き込みでは外力がある大きさを超えると引き込み現象が起こる(外力の周波数に引き込まれる)。従って分子の引き込みに臨界条件がある場合には、強制引き込みであると判断できる。 シミュレーション結果の解析と数理モデル構築を試みた。分子動力学シミュレーションでは多数の分子を扱う多体系である。すなわち多数の非線形振動子の結合系に対応する。引き込み現象を起こす分子は、分子間相互作用の強弱、分子の振動位相の違いにより決まることが予想できる。現在、シミュレーション結果を再現し得る分子系の集団引き込み現象を表す数理モデルを構築している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は分子レベルのミクロな世界で引き込み現象が現れるかどうかを観測・解析・検証することを目的としている。引き込み現象とは振動体同士が影響しあって起こる時間軸上の自己組織化ともいえる非線形現象である。蛍の同時発光現象や心臓細胞の律動等のマクロな世界で現れる引き込み現象が分子等のミクロな世界にも現れる可能性がある。平成23年度では分子動力学シミュレーションの実施により具体的なミクロな世界の二原子分子での引き込み現象を観測できたために順調に進展していると云える。また、ミクロな世界での引き込み現象はマクロな場合と違い恒久的なものではないのではないかという新しい見地も見いだしている。当初の計画通りに研究が進展している。ただし、予定していた学会に参加できなかったため、平成24年度に学会での報告を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究計画の最終年度となる。今後の研究活動が遅れないように連携研究者達との連携をより密にしながら計画通りに実施する予定である。尚、平成23年度研究費においては予定していた学会参加のやむを得ない不参加により研究費使用計画と異なる。平成24年度では学会参加等で成果発表に使用する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度ではこの研究の詳細な解析をもとに本研究をまとめる。そのために国際学会等での研究結果発表、研究作業補助としての謝金を中心に研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)