2011 Fiscal Year Research-status Report
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23655102
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
杉原 伸治 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70377472)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 精密重合 / ビニルエーテル / ラジカル重合 / カチオン重合 / RAFT重合 / 塊状重合 |
Research Abstract |
様々な種類の高分子を合成可能にすることは,多機能性を追求する上で非常に重要である。特に,ビニルエーテル類をラジカル重合するような,そもそも不可能と言われる重合にチャレンジすることは,重合反応の原理の追求だけでなく,従来から用いられてきた反応性に対する考え方も大きく変換することになる。本研究では,非ラジカル重合性モノマーであるビニルエーテルを用い,そのラジカル重合能を確かめ,その精密重合系への拡張を行うための分子設計ならびに重合反応設計に挑戦した。 まず,ビニルエーテルに直接可逆的付加開裂連鎖移動を引き起こす官能基を付与したもの(RAFT-VE)を合成し,リビングカチオン重合ならびにリビングラジカル重合の両方が進行する新規重合法を構築した。ここでは,2種類のRAFT-VEを合成し,一つは,アクリル系,アクリルアミド系,スチレン系に適用可能なRAFT-VEを設計し,もう一方は,酢酸エチル等の重合に適当なRAFT-VEを設計した。 まず,RAFT-VEからビニルエーテルの重合を開始した。RAFT-VEをあらかじめ酸付加体とし,そこから通常のリビングカチオン重合系にて実施した。次に,得られたポリマーをマクロ連鎖移動剤として続くラジカル重合系に用い,これまで得られたことのないビニルエーテルとアクリル系,アクリルアミド系,スチレン系または,酢酸エチルとのブロックコポリマーを得た。さらに上記の重合結果を反映し,ビニルエーテルの直接ラジカル重合が進行しないか,塊状ラジカル重合での検討を展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高分子合成のチャレンジとして,「非ラジカル重合性モノマーのリビングラジカル重合」を掲げた。そのモノマーとしてビニルエーテルを用いている。まず第一として,当初の計画では,リビングカチオン重合ならびにリビングラジカル重合の両方が進行する新規重合法を構築が初年度の実施内容であった。幸い,重合反応が思った以上に進み,その重合系の構築もほぼ完了し,この重合系を拡張したビニルエーテルの直接重合へと展開しはじめた。このような状況から,現在までの達成度は計画以上に進展している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の2点を同時に進行させ,本研究を推進する。 1. ビニルエーテルモノマーとしてtert-ブチルビニルエーテル(TBVE)を用いる。一方酢酸ビニル(VAc)をリビングラジカル重合系に適用する。VAcの重合物は,おそらく立体構造としてアタクティック(a)であると推定できる。一方,TBVEのカチオン重合では,アイソタクティックリッチ(i)であるため,同モノマーのステレオブロックコポリマーを合成し,得られたポリマーを加水分解し,ステレオブロック―ポリビニルアルコール((i)PVA-(a)PVA)を合成する。 2. ビニルエーテルを直接塊状ラジカル重合によってポリマー化することを進める。特に,ビニルエーテル炭素の電子密度を変化させ,重合を進行するように工夫する。具体的には,油溶性開始剤を用い,ラジカルがビニル基に付加した後,そのラジカルがビニルエーテル側鎖で共鳴し,そのビニルエーテル自身が連鎖移動剤として働くように,ラジカル開始剤を用い,ビニルエーテルのラジカル重合法を検討する。さらに,得られたラジカル重合の条件下にて,可逆的付加開裂連鎖移動剤を添加し,リビングラジカル重合系のひとつであるRAFT重合へと本系を展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の結果を受け,平成24年度には学会にて成果発表を行う。また,平成24年度も引き続き合成研究を行うため,薬品およびガラス器具類の必要経費を使用する計画である。
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