2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大内 誠 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90394874)
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Keywords | 高分子合成 / リビング重合 / ラジカル重合 / レドックス / 有機金属錯体 / 分子認識 / 触媒 / 配位子 |
Research Abstract |
生体内反応では、高選択的な分子認識を通じて、酵素が反応を触媒し、高度な基質選択性を発現する。特に、タンパク質のアミノ酸配列が、核酸塩基配列(コドン)によるアミノ酸モノマーの特異的認識によって制御される点は、分子認識に基づく重合制御の重要性を物語っている。一方、申請者が研究してきたリビング重合では、触媒や開始剤の設計により重合活性種の副反応を抑制し、ポリマーの分子量や末端構造の精密制御が可能となる。しかし、生体内重合に迫る高度制御(立体構造と分子量の同時制御、共重合組成の任意制御、繰り返し単位(機能基)の配列制御など)を実現するには、新たな制御原理、触媒機構が求められる。 本研究では,「金属触媒によるリビングラジカル重合」に対し,モノマーを認識可能な触媒を設計することで,上述したような高度制御を目指してきた。平成23年度までに,溶媒分子が弱く配位した「カチオン性ルテニウム錯体」が触媒として機能することを見出し,モノマー認識触媒に対する足がかりを得た。平成24年度は,組み合わせる配位子の設計や,この触媒と融合させることが可能な「フェロセン助触媒を用いた協奏触媒機構」について知見を深化させ,触媒性能を高めることに成功した。さらに,カチオン性錯体にヨウ素型開始剤とフリーラジカル重合開始剤(AIBNなど)を組み合わせることで,酢酸ビニルに代表される重合制御が困難なモノマー群(低重合性モノマー)の重合活性が向上できることを明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは触媒として中性錯体の配位飽和錯体を用いており,配位空きサイトは存在しなかったが,カチオン性にすることで,モノマーとの相互作用が可能な触媒へと展開しうる基盤触媒を見出した。しかし一方で,その触媒活性は中性錯体に比べて低い場合が多かった。今年度は,この配位性を維持したまま,触媒活性を高めることに成功しており,本研究で目的としている「低重合性モノマーの重合制御」「立体構造制御」へと展開する足掛かりを築けたという点で「おおむね順調に推移している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はカチオン性錯体の対アニオンの設計によって,モノマー配位サイトの構築を検討しながら,これまで得られた高活性化の知見を融合することで,モノマーを認識できる高活性触媒の開発を目指す。そして,アクリロニトリルなどの配位性モノマーの重合制御,酢酸ビニルやαオレフィンなどの低重合性モノマーの重合制御を検討する。さらに「立体構造制御」に向けた触媒システムの構築を目指し,モノマー認識サイト周辺へのキラル環境の導入を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モノマーを認識できる高活性触媒の開発に向け,出発となるルテニウム錯体前駆体,カチオン化剤,配位子,配位子合成のための原料などの消耗品に使用する。特に,立体構造制御に重要になると考えられるキラル配位子の購入に充てる。さらに,得られたポリマーの構造を解析するために,NMR重溶媒や排除体積クロマトグラフィーカラムなどの消耗品を購入する。
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Research Products
(18 results)