2011 Fiscal Year Research-status Report
室温で液晶性を示す両親媒性高分子の合成と水中での自己集合体形成
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23655107
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 液晶性高分子 / 両親媒性高分子 / 自己集合 / 高分子ミセル / メソゲン基 / 臨界ミセル濃度 / DDS / 相転移 |
Research Abstract |
本研究では,室温付近で液晶性を示す新規な両親媒性液晶高分子を合成し,水中における高分子ミセル形成とその医療応用を目的としている。本年度は,室温付近で液晶性を示す両親媒性液晶高分子の合成を中心に,得られたポリマーのキャラクタリゼーションも行った。その結果,本年度は以下のような研究成果が得られた。(i) 両親媒性液晶高分子の合成これまでに報告してきたメソゲン基導入ポリシロキサンなどの合成方法を参考にし,柔軟な主鎖としてのポリメチルシロキサン(PMS)に疎水性メソゲン基と親水性PEG鎖を導入することにより,室温付近で液晶性を示す両親媒性液晶高分子(PEG-g-LCP)の合成を試みた。まず,所定の方法で疎水性のメソゲン基モノマーを合成した。次に,合成したメソゲン基モノマーおよび末端にメタクリレート基を有するPEG(PEGMA)を,白金触媒を用いてPMSの側鎖に付加反応させることにより,メソゲン基とPEG鎖を導入したPEG-g-LCPを合成した。さらに,メソゲン基やPEG鎖の導入量が異なるPEG-g-LCPを合成し,その組成を1H-NMRやFT-IRによって決定した。また,ii)の結果と連携して最適な両親媒性構造を有するPEG-g-LCPを合成するための反応条件を明らかにした。(ii) 両親媒性液晶高分子の構造評価合成したPEG-g-LCPの液晶構造を評価するため,示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度(Tg)および液晶-等方相転移温度(TNI)を調べた。また,偏光顕微鏡を用いて各温度におけるPEG-g-LCPの液晶構造を観察し,液晶領域の確認とそのモルフォロジーを明らかにした。このようにして調べた液晶構造に及ぼすPEG-g-LCPのメソゲン基導入量やPEG鎖導入量の影響を調べ,室温付近で液晶状態となるPEG-g-LCPの合成条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疎水性のメソゲン基と親水性のポリエチレングリコール鎖をポリメチルシロキサンに導入することにより,両親媒性液晶高分子を行い,当初の予定よりも若干早めに合成方法を確立することができた。その結果,両親媒性液晶高分子のキャラクタリゼーションも行うことができ,今後は水中における高分子ミセル形成などに着手することができる。このような状況からほぼ順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究によって,室温付近で液晶性を示す両親媒性液晶高分子の合成に成功した。そこで,平成24年度は,当初の研究計画通りに,水中での高分子ミセル形成を試みる。特に,その臨界ミセル濃度(CMC)を決定し,高分子ミセル形成条件を明らかにする予定である。また,高分子ミセルを形成させた後,その温度変化による液晶構造変化に基づいて高分子ミセルの構造変化を誘起させる。さらに,その高分子ミセル内に薬物を内包させ,温度変化などの外部刺激による薬物放出制御機能について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費は,主に両親媒性液晶高分子を合成するための試薬に使用すると共に,一部の研究成果を国際会議で発表するための旅費としても使う予定である。また,予想よりも効率よく両親媒性液晶高分子を合成できるようになったため,実際に多量の両親媒性液晶高分子を合成し,高分子ミセルを形成させるための条件を検討するので,合成試薬や装置消耗品の購入に研究費を使用する。さらに,この液晶高分子ミセルを薬物キャリアとして検討するため,高価な薬物の購入のための物品費としても使用する予定である。また,一部ルーチン化できる実験には学生の補助などによって効率よく研究を進める予定であり,そのための謝金として使用する。さらに,研究成果を論文としてまとめて投稿するためにも研究費を使用する。なお,次年度への繰越金は,当初の予定では合成方法を確立するために合成試料を多量に必要とすることを予想していたが,予定よりも早く合成に成功した結果,次年度に予定している薬物放出実験などの実験回数を増やすために研究費として使用できるようになった。また,関連する国際会議での招待講演を依頼され,申請段階では予定に入っていなかった次年度の海外出張への旅費として使用することも考えている。
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