2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリチオフェンまわりの精密空間設計による電気伝導メカニズムの解明
Project/Area Number |
23655108
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
杉安 和憲 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (80469759)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | ポリチオフェン / 導電性高分子 / 荷電キャリア |
Research Abstract |
ポリチオフェンは最も良く研究されてきた導電性高分子のひとつである。合成法も十分に確立さており、様々な分野への応用が試みられている。実際に、有機薄膜太陽電池や電界効果トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミックディスプレイなどにおける有機機能材料として用いられている。このように研究され尽くされたかに見えるポリチオフェンのキャリア伝導メカニズムが未だに議論されているのはやや驚きである。『キャリア種は何か?』そして、『それはどのように材料中を流れて行くのか?』など、について様々なモデルが提案されている。我々は、次元制御されたポリチオフェンを合成することによって、この議論に加わりたいと考えている。下図に示す特殊構造ポリチオフェンは、立体的にその分子間相互作用が阻害されており、かつ極めて高い平面性(発達したπ共役)を有する。この『まっすぐなポリチオフェン1本』の中で生成するキャリア種を特定することを試みた。用いた特殊構造ポリチオフェンは、極めて明瞭なスペクトロエレクトロケミストリーを示した。その過程は3段階に分けることができた。各過程について、ESRスペクトルおよびラマンスペクトルを測定した。その結果、ドーピングレベルが上昇するに伴って、ポーラロン→ポーラロンペア→バイポーラロンとキャリア種が変化して行くことが確認された。ポーラロンペアは、オリゴチオフェンを用いた系統的な研究によって提案されてきたキャリア種であるが、ポリチオフェンについてはほとんど議論されてこなかった。今回、特殊構造ポリチオフェンを用いることによって初めて明確に確認できた。また間接的には、キャリアの生成および安定性に対して、分子間相互作用が強く影響を及ぼしていると結論づけられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、電気化学的にドーピング過程をコントロールすることによって、荷電キャリア種の生成を精密に制御することに成功した。これによって、ドーピングレベルによって異なる荷電キャリアが生成することが明らかになった。また、絶縁被覆されたポリチオフェンと一般のポリチオフェンを比較することによって、分子間相互作用が荷電やリア種の生成および安定性に影響を及ぼしていることを明らかにした。これらの成果はポリチオフェンまわりの精密空間設計によって始めて得られた知見であり、その意義は非常に大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポリチオフェンの2面角とポリチオフェン1本鎖内のキャリア移動度の相関を見積もるために、2面角を制御したポリチオフェンを合成する。また、共役長の異なる被覆オリゴチオフェンを合成し、キャリア移動度と有効共役長の相関を明らかにする。前年度に確立した電気化学的手法を展開し、一連の化合物のドーピングレベルと導電率との相関を系統的に調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、有機合成試薬および合成用消耗品の購入に主に充てる。また、分光スペクトル測定および電気化学測定のためのセル、電極をさらに追加購入する。国際会議への積極的な参加によって、本研究について国内外の研究者と討議する。以下の会議への参加を予定している。(1)221st ECS Meeting/Seattle, WA/5月5-10日(2)IUMRS-ICEM2012/横浜/9月23-28日(3)IKCOC-12/京都/11月12-16日
|
Research Products
(4 results)