2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチ認識ポケットを備えた単結晶ナノチャネルの機能
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23655117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 光彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60187333)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 機能性結晶 / 分子認識 / 超分子金属錯体 |
Research Abstract |
分子サイズの細孔を有する多孔性物質は、貯蔵・分離・触媒等の空間機能を示す物質群として、近年注目を集めている。我々は、多孔性物質の細孔壁面上にサイズ・形状・キラリティーが異なる分子包接ポケットを配置し、包接ポケットの分子認識を介して内部空間の官能基化を行うことを考えた。三つの二座配位子を有する大環状配位子は、大環状三核Pd(II)錯体の四種類の配座・鏡像異性体からなる1.9 × 1.4 nm2のナノチャネル構造を有する黄色板状単結晶を生成した。この単結晶ナノチャネルの壁面上には大環状錯体および錯体間の空隙に由来する分子包接ポケットが単位構造あたり計10種類存在し、ベンゼンや置換ベンゼン等の芳香族化合物を位置選択的に配列することが可能であった。さらに、壁面上の分子包接ポケットの種類やキラリティーが異なる多種の多孔性Pd(II)錯体結晶を得ることにも成功した。大環状三核Pd(II)錯体が溶媒依存の結晶多形を示す。例えば、DMSO-CHCl3混合溶媒中の錯体形成により、大環状三核Pd(II)錯体のP-Syn、M-Syn体から成る2種類の多孔性Pd(II)錯体結晶が同時に形成した。また、DMSO-CH2Cl2混合溶媒中では単位胞がP-SynもしくはM-Syn体の一方の鏡像異性体から形成される多孔性Pd(II)錯体結晶が得られた。この多孔性結晶はP-SynおよびM-Syn体を等量含むラセミ混晶であったため、光学活性な糖誘導体の共存下、DMSO-CH2Cl2混合溶媒において結晶化を行ったところ、一方のSyn体が主成分である結晶が得られ、不斉結晶化が進行したことが単結晶X線構造解析より明らかとなった。これらの結果は、機能性分子の自己集合化が機能空間の構築のための優れた手法であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究により設計・合成された大環状金属錯体からなる機能性ナノチャネル結晶において、当初目的としていたゲスト分子の位置選択的捕捉に加えて、溶媒の種類により形やサイズが異なる空間が構築できること、および光学活性な糖誘導体を添加することにより容易に不斉結晶化が起こることが明らかにされた。結晶の原料である大環状金属錯体はデザイン性が高く、合成も短工程であるため、目的に合わせたさまざまな形やサイズ、官能基群をもつ結晶が得られると期待される。多孔性空間を定量的にデザインする一般性の高いアプローチ法を提供できるであろう。 このように、当初期待した以上に、新しい局面が切り拓かれ、その研究成果は国内外で高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの知見を踏まえて、多孔性をもつさまざまな機能性単結晶を設計・合成し、溶媒の種類による多孔性制御や、キラル物質の添加による不斉結晶化の機構を明らかにする。これらの結晶群について、ゲスト分子の位置および立体選択的取り込み、高効率・高選択的反応などを詳細に検討する。また、内部表面に蛍光性分子などを固定し、ナノチャネル内のゲスト分子の種類や光などの外部刺激に対してどのような応答反応が起こるかを明らかにする。固体物性および動的性質の両面から、最終目標に向けて多面的に研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費70%(ナノチャネル結晶の合成用原料費やゲスト分子の購入、X線構造解析その他の分光測定に要する消耗品など)、旅費20%(錯体化学会、日本化学会年会などにおける研究成果発表)、その他10%(論文別刷代、機器使用料)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)