2012 Fiscal Year Research-status Report
ルビジウムによる特異な酸素還元触媒メカニズムの解明
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23655121
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北村 房男 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00224973)
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Keywords | 酸素還元 / ルビジウム / タリウム / 金電極 / 触媒 |
Research Abstract |
本研究は、ルビジウムイオンを含む塩基性水溶液中における金電極での酸素還元反応(ORR)が、他のアルカリ金属イオンの場合に比べて著しく促進される現象について、そのメカニズムを解明することを目的とする。前年度までの研究において、酸素還元反応に対して活性を示すルビジウム以外の第二成分の存在が示唆されていたが、本年度はこれを究明すべく詳しく検討を行った。われわれが最初にこの現象を見出した硫酸ルビジウム試薬を含む水溶液中に金電極を浸漬し、酸素還元活性が発現される状態となったことを電気化学測定により確認したのち、水溶液中から引き上げてXPS測定を実施したところ、微量のタリウムイオンが吸着していることが判明した。前年度においては、ICP-MS発光分析法を用いて溶液組成についてかなり詳しく分析を行ったが、XPSで検出されたタリウムイオンの量は、この手法では検出できないほどの低濃度レベルであった。そこで、水酸化ナトリウム水溶液中にタリウムイオンを微量添加して、金電極での酸素還元反応を調べたところ、同反応に対する活性が向上することがわかった。しかし一方において、酸素発生反応に対する活性はほとんど見られなかった。以上の実験事実に基づいて、ルビジウムイオンの及ぼす効果を正しく見極めるためには、タリウムイオンの及ぼす影響を評価することが先決である、という結論に達した。銀や銅など、他の金属電極についてもタリウムイオンが効果を示すかについて検討を行ったが、金に対する効果が最も大きいことがわかった。現在、XPSを用いて吸着したタリウム原子が金表面の電子状態に及ぼす影響を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は酸素還元反応に対する触媒的作用の発現を助長する他の物質の探索を中心に実験を進めてきた。その結果、電極表面に吸着した微量のタリウム原子の存在が、酸素還元反応を促進する事実を特定することができた。しかし、この特定作業および検証実験に多くの研究時間を割いたため、当初の目的であったルビジウムイオン単独、あるいは助長成分との協奏効果を評価するための検討はこれ以降に実施することとなる。この意味において、当初の実施計画案よりも遅れが生じていると判断せざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、タリウムイオンが酸素還元反応に対して大きな触媒作用を示すことが明らかとなった。そのメカニズムを明らかにすることは、高活性な触媒の設計上、非常に興味の持たれるところである。一方、過去の先行研究を調査したところ、タリウムの触媒効果はすでに報告されてはいるが、主に吸着に伴う電極表面の原子配列構造の幾何学的変化にその要因に求めている。しかしわれわれは、今年度実施したXPS測定の結果に基づき、吸着原子が下地金属に及ぼす電子的な効果もあるのではないかと考えている。本年度はこの点をさらに詳細に検討する予定である。 そうした検討結果を踏まえた上で、本研究課題の本旨であるルビジウムイオンの効果を明らかにする実験を進める。具体的には、まず、タリウムの影響を全く受けない条件におけるルビジウムイオンの触媒効果の検討、および、タリウム共存下との挙動の違いについて電気化学測定を実施する。反応メカニズムの解明のためには、「その場」分光法などの併用が必須であるので、従来の赤外分光法に加えて、可能であればラマン分光も実施して表面酸素種の検出を行い、解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き実験に必要な電極材料や試薬類などの消耗品の購入を行うとともに、研究補助のための謝金を計上する。次年度は本研究の最終年度に当たるので、研究成果発表のための学会参加費・旅費、成果取りまとめのための印刷費などを計上する。
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