2011 Fiscal Year Research-status Report
酵素類似機能を発現するゼオライト細孔空洞とカルボカチオンの炭素-炭素開裂反応
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23655122
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
馬場 俊秀 東京工業大学, 総合理工学研究科, 教授 (50165057)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | ゼオライト / 細孔入口径 / 細孔空洞容積 / カルベニウムイオン |
Research Abstract |
本研究の目的は「ゼオライトの細孔空洞(キャビティー)の大きさとカルボカチオン(カルベニウムイオンとカルボニウムイオンの総称)の大きさが一致すると,その特定のカルボカチオンの炭素‐炭素結合が選択的に開裂する」というコンセプトを初めて提案することにある。 1-ヘキセンの分解反応を細孔入り口径,および細孔空洞容積の異なる 8‐,10‐,12‐員環ゼオライトを用いて行なった。プロピレンへの選択性に及ぼす細孔入り口径の影響を調べたところ,細孔入り口径の大小では,プロピレンの選択性を説明することができなかった。この結果はプロピレンの選択性を,生成物規制の選択性では説明できないことを示している。 一方,プロピレン選択率は,細孔空洞容積で説明することができた。細孔空洞の形は,ゼオライトに依存する。そこで細孔空洞に包摂する最大包摂球の直径を空洞容積の尺度とした。その直径を Di で表すことにする。プロピレンの選択率がゼオライトの種類によらず,Di がおよそ 6 A で最大になるという結果を得た。これはそれぞれのゼオライト群で,プロピレンの最大選択率を示すゼオライトの細孔空洞容積は同じであることを示している。即ち,プロピレンの選択率は,細孔空洞容積によって決まることを意味している。 プロピレンの選択性が細孔空洞容積に決まることは,反応中間体であるヘキシルカルベニウムイオンの大きさが関係している可能性が高い。そこでヘキシルカルベニウムイオンの大きさをDFT計算によって求めた。ここでカチオンの形状を球体と仮定すると,その直径はおよそ 6 Aであった。この結果は,1‐ヘキセン転化反応において最も高いプロピレン選択率を与えるゼオライトはヘキシルカルベニウムイオンの大きさと同じ細孔空洞容積を有するゼオライトであると結論できる。 上記に結果を基に,研究目的である新たなコンセプトを提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細孔空洞容積の異なるゼオライトを合成することに時間がかかっている。しかし,3月に入り合成することに成功したので,本来の研究目的に向って研究を継続している。研究終了期間直前になって,大きな進捗があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究が計画通り進まないことは十分に起こりうる。しかし,上記に述べたように目的のゼオライトが合成できてきてきているので,かなり研究が進捗した。こうしたことを未然に防ぐには,言うまでもなく研究計画を練ることが必要である。 しかし,挑戦的萌芽研究では結果がどうなるか分からない研究を行うことが求められると考えている。報告書のための研究ではないと信じて疑わない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の執行額に残額が生じた状況としては、研究を進める段階で、反応に用いるゼオライト触媒の合成が予定通り進捗できなかったため、繰越を申請した。合成法を変えて新たな構造規定剤を合成することで、該当するゼオライトを合成する。そのための合成試薬、並びにその合成に使用するオートクレーブのテフロン内筒を購入する。
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