2011 Fiscal Year Research-status Report
フォトクロミズムと酸塩基反応の協同効果による溶解性の制御
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23655123
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
横山 泰 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60134897)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ジアリールエテン / フォトクロミズム / フェナントロリン / シュウ酸 / 凝集 / 溶解度 |
Research Abstract |
本課題において、フェナントロリンを有するジアリールエテンは、トリフルオロメタンスルホン酸が存在するとその閉環着色体の吸収極大が長波長化すること、その開環体とシュウ酸とを溶液中で混合すると凝集して析出・沈殿を生じることが分かっていた。変性23年度には、シュウ酸と同様の各種二塩基酸を用いて、どのような二塩基酸が凝集を引き起こすか、ということを確認した。その結果、マロン酸、コハク酸はフェナントロリンと相互作用していることは確認できたが、凝集を引き起こすほどではなかった。また、スクアリン酸を用いて調べたが、やはり凝集は起きなかった。従って、シュウ酸だけが特異的に凝集を引き起こすことが確認された。このことは、シュウ酸が剛直な構造をしているために、開環体と一分子対一分子で塩を形成すると分子内の単結合の回転の自由度が失われ、エネルギー的に不利になるために、分子間で塩を形成して高分子状態となり、分子量の増大によって溶解度が低下したのではないかと推論された。また、当初の計画にはなかったが、スピロピランに光照射することでプロトンを発生させ、閉環体の吸収極大を長波長化できないか、ということを検討した。その結果、光によるプロトン発生によって8nmの長波長化が観測された。これは媒体に少し水を入れているためにプロトンが水和され、フェナントロリンに接近できなくなったために大きな長波長化が観測されなかったのではないかと考えている。スピロピランの熱戻り反応によってプロトンが消失すると、吸収は元に戻った。これにより、光による吸収極大波長の可逆なファインチューニングが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、凝集を引き起こす酸を特定できた。さらに、当初計画になかったこととして、光によって酸を発生させ、それによって着色した閉環体の可視部の吸収極大を長波長化させ、また熱によって元に戻すことができた。この、吸収スペクトルの光による可逆制御は、本課題にとってきわめて大きな成果であり、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究によってシュウ酸の特異性がはっきりしたので、平成24年度は、その凝集体の構造を明らかにすることを目的とする。また、着色体の吸収極大を光による酸発生・消滅によって可逆制御できることが分かったので、このシフト幅を大きくすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、それまでに合成してあった化合物を用いて研究を進めたので、合成用試薬などの消耗品をあまり使わなかった。平成24年度には合成をたくさんする予定であるので、消耗品に対する支出が増える予定である。平成24年度当初において、設備備品を購入する予定はない。
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