2011 Fiscal Year Research-status Report
ホルマリンからオリゴ糖へ:人工ホスト分子を活用した新規糖合成法の創成
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23655124
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
阿部 肇 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (10324055)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ホルモース反応 / グリコシル化反応 / ホスト・ゲスト化学 / 大環状分子 / 人工酵素 |
Research Abstract |
(1)人工大環状ホスト分子の設計人工ホスト分子の選定標的とする糖合成反応の制御に適する人工ホスト分子を、申請者が開発してきたエチニルピリジン型ホスト分子のレパートリーの中から選んだ。まず、グリコシル化反応については、マルトースを高選択的に認識することが既に分かっているD2h 対称型大環状分子を利用することにした。その分子の環構造は長軸と短軸の長さが異なり、ちょうどマルトースの鎖長に合う空孔を有する。ホルモース反応については、生成比の向上を狙うグルコースに合わせ、より対称性が高い正六角形構造を持つ環状分子を利用することにした。(2)人工大環状ホスト分子の合成上記の分子設計に従い、実際の分子の合成を行った。薗頭反応を利用し、環状構造を得ることができた。(3)人工大環状ホスト分子を添加した場合の選択性への影響の調査反応系中で現れるホスト分子の添加効果を、生成物の分析を通して検討した。グリコシル化反応では、2分子のグルコースから得られる生成物の組成が、人工ホスト分子の有無により受ける影響を、CD、NMR を用いて解析した。ホスト分子を用いない対照実験との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の欄に上記したように、(1)人工大環状ホスト分子の設計(2)人工大環状ホスト分子の合成(3)人工大環状ホスト分子を添加した場合の選択性への影響の調査までの過程は順調に進んでいる。問題が残っていることは、大環状分子の平面性が高いために自己会合が強く、取り扱いにおける若干の難が解決しきれていない点である。
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Strategy for Future Research Activity |
合成に成功した人工大環状ホスト分子について、糖に対する分子認識能や物性の評価を行う。そして併せて、ホルモース反応やグリコシル化反応、あるいはその逆反応について、今回開発した分子に触媒機能が現れるかどうか、添加剤の効果もあわせ検討する。そのために、各種分光学的手法を用いる。そこまでの成果をもとに、合成法や分子構造の最適化をすすめ、応用性の向上を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)反応条件の最適化初年度で得られた知見をもとに、人工ホスト分子による選択性の向上がもっとも効率的に行われる反応条件を探る。検討すべきパラメーターとして、溶媒の種類、反応温度、試薬の当量などが挙げられる。一般に、水素結合によりエンタルピー駆動で分子認識を行う系では、極性の低い溶媒中、低温下で高い会合率が得られる。そのような傾向が合成反応でも成り立つかどうかを確かめる。当量については標的とするゲスト分子が確実に会合体に取り込まれて安定化を受けるよう、人工ホスト分子を化学量論量用いる条件から始め、触媒量まで減らせる条件を探していく。(2)人工ホスト分子の再設計、最適化人工ホスト分子の構造について、反応の制御に適した構造を探る。必要に応じてホスト分子の合成法の新規開発や最適化をも行い、安価で簡便にホスト分子が得られるよう検討する。
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Research Products
(8 results)