2011 Fiscal Year Research-status Report
三回対称を有するプロペラ分子の合成と集積状態の電子構造解明
Project/Area Number |
23655128
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60324745)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 三回対称 / PAH / グラフェン / 導電性 / ラジカルカチオン |
Research Abstract |
ディラックフェルミオンやエッジ状態などのグラフェン特有の性質を与えるような、分子性物質を創出することが、本研究の目的である。グラフェンはパイ電子がハチの巣状に並ぶことによりその特異な性質が発現しているが、分子を結晶中あるいは基盤上でハチの巣状に並べることができれば、グラフェンと等電子構造を有する固体を生み出すことが可能となる。分子としては三回対称性を有するプロペラ状芳香族分子を用い、集積状態でハチの巣構造を形成するような工夫を施す。本年度は、合成に注力し、新たな分子を複数個生み出し、同時に単分子状態の物性も明らかにすることを目標にした。 本研究で想定しているプロペラ状芳香族分子の基本骨格は、1,8-ジアミノナフタレンから3段階で得られることが過去に報告されているが、全収率が11%と著しく低いため、まずは改良合成法の開発を行った。種々の検討の結果、アセナフテンキノンと1-ブロモナフタレンを出発物質として、2段階で全収率90%の効率的合成法の開発に成功した。得られたプロペラ状芳香族分子の基本骨格をもとに、π電子系の拡張を試みた。プロペラの1つの芳香族ユニットに、ベンゼン環を1つ縮環させた、トリスフェナレニル分子の合成検討を行い、種々の検討の末、目的化合物の合成に成功した。現在、単分子の性質を明らかにするため、電気化学測定、電子吸収スペクトル測定などを実施中である。また、よりπ系を拡張させたトリスピレン分子の合成検討も行い、目的化合物の前駆体まで合成が完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新たな分子を複数個生み出し、同時に単分子状態の物性も明らかにすることを目標にしているが、実際に新規化合物を1つ合成し、その単分子の性質も部分的ではあるが明らかにした。また、別の化合物の合成にも着手し、前駆体の合成まで至っている。したがって、本年度の目標をおおむね達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな分子の合成を実施しつつ、最終目標である分子集合状態での物性を明らかにする。合成した分子を電解酸化などによりラジカルカチオン種にし、その単結晶を得ることを試みる。単結晶が得られた場合は、導電性や磁気特性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
化合物合成用の試薬や実験器具などの消耗品、および学会に参加するための旅費に主に使用する予定である。
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