2012 Fiscal Year Annual Research Report
三回対称を有するプロペラ分子の合成と集積状態の電子構造解明
Project/Area Number |
23655128
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60324745)
|
Keywords | グラフェン / 電気・磁気的機能 / ディラックフェルミオン / 三回対称 |
Research Abstract |
グラフェンがゼロギャップ電気伝導性を示すのは、ハチの巣状に並ぶπ電子が作り出す、特殊なバンド構造に由来する。もし仮に不対電子を有する分子をハチの巣状に並べることができれば、分子を用いてグラフェンの特殊なバンド構造を再現できることになり、グラフェンの持つ電子的特徴を分子集積化によって生み出すことが可能となる。そこで「三回対称性」を有するプロペラ状芳香族分子を設計・合成し、一電子酸化を行って、二次元ハチの巣構造の構築を目指した。 実際に合成を行ったのは、フルオランテンが縮環した[3.3.3]プロペランである。種々条件検討の結果、この化合物を市販化合物から6段階で合成することができた。最終生成物の再結晶を行ったところ、良好な単結晶が得られ、X線構造解析の結果、実際に固体中でハチの巣構造を形成することが明らかとなった。そこで一電子酸化を試みたが、残念ながら分解生成物を与えるのみだった。一方、このプロペラ分子のメトキシ誘導体をF4-TCNQと混合したところ、濃緑色の電荷移動錯体を与え、得られた単結晶のX線構造解析を行ったところ、この電荷移動錯体もハチの巣構造を有していることが分かった。 以上のように、プロペラ型構造を持つ三回対称性分子は、ハチの巣構造の形成に有利な構造をしていると思われる。現在、π共役系のさらなる拡張を行った、ペリレン骨格を有する分子の合成を行っており、1H-NMRではその生成を確認できている。今後、一電子酸化を行い、ディラック点を持つ結晶を得る予定である。
|