2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリ酸共存下でのマイクロ波照射によるセルロース性資源の物質変換とその応用
Project/Area Number |
23655131
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
酒井 剛 宮崎大学, 工学部, 教授 (40284567)
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Keywords | ポリ酸 / セルロース / マイクロ波 / グルコース / バイオマス / 直接糖化 / 完全糖化 |
Research Abstract |
本年度は、交付申請書に記載の「電磁気学的手法による機能触媒の制御に関する試み」について、平成23年度に新規に見出した溶媒の効果について、再現性の確認と、メカニズムの解明に取り組んだ。これまで、アルコール系の溶媒によってセルロースの分解が進行することが示唆され、特に混合溶媒によってグルコース収率が増加することがわかった。水を溶媒に用いた場合のセルロースの直接糖化によるグルコース収率は約40 %であるが、混合溶媒(水:エタノール=75:25)を用いた場合の生成グルコース収率は、60~70%に向上し、特に300 Wで比較的安定した高いグルコース収率を得ることができ、マイクロ波出力を制御することも重要であることを見出した。よって、溶媒の効果とマイクロ波の出力制御によるセルロース系バイオマスの高効率変換条件をほぼ確立したと考えている。 次に、セルロースの直接糖化で得られる黒色物質を同定するため、グルコース、セルロース、スクロースを硫酸で処理した場合に得られる同様な黒色試料をXRDとIRで評価した。これまで、有機物に対するマイクロ波照射などによって、黒色変化した有機物の化学構造を詳細に検討したところ、黒色化する有機物は、環状構造を持ち、かつ環内にC-O-C結合を含むという共通した性質を持っていることがわかっている。XRDとIRの結果から、セルロースの直接糖化で生成する黒色物質は、C-O-C結合の切断による開環と脱水素酸化によって生成したと考えられ、目的物質をグルコースとした場合は過分解状態であることが示唆された。 また、本年度の新たな取り組みとして、触媒として用いているケイ酸タングステンの乾燥状態を制御してセルロースの直接糖化に用いた。その結果、99%という非常に高い収率が得られる変換条件を見出し、直接糖化メカニズムをほぼ解明するとともに、完全糖化が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載した「電磁気学的手法による機能触媒の制御に関する試み」については、黒色変化した有機物の化学構造調べることにより、黒色化する有機物は、環状構造を持ち、かつ環内にC-O-C結合を含むという共通した性質を持ち、さらに、セルロースの直接糖化で生成する黒色物質は、C-O-C結合の切断による開環と脱水素酸化によって生成することを明らかにし、グルコースを目的物質とすると過分解状態であることが示唆され、「①機能触媒(ポリ酸)存在下でのマイクロ波照射によるセルロースの分解に関する基礎研究」については当初の目標をほぼ達成した。 また、溶媒の効果とマイクロ波の出力制御によって60%以上の高収率でセルロースを直接グルコースに変換できる条件をほぼ確立し、「②マイクロ波照射によるセルロース系バイオマスの高効率変換条件の確立」についても当初の目的をほぼ達成したと考えている。ただし、本年度の新たな取り組みとして、触媒として用いているケイ酸タングステンの乾燥状態を制御してセルロースの直接糖化に用いると、99%という非常に高い収率が得られる変換条件があることを見出した。そのため、セルロースの完全糖化が可能であることが示唆され、より高い目標設定が可能であり、本項目については当初の予定よりも大幅に進展したと考えている。 電磁気学的手法で予想以上の結果と進展が見られたため、電気化学的手法および光学的手法による機能触媒の制御については、検討を先送りにしている。この点は平成25年度で検討するが、これまでの初期的検討では、電磁気学的手法が他の電気化学的手法および光学的手法に比べて極めて効果的であることがわかってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでに得られた基礎的な知見や新規知見をもとに、本研究で機能触媒として位置づけているケイ酸タングステンの結晶構造(具体的には含水率)の制御に取り組み、結晶性と触媒機能との関係、特に、生成グルコース収率との関係を調べる。平成24年に得られた99%の高収率の再現性を評価するとともに、メカニズムの解明と完全糖化への発展を目標に研究を進める。また、24年度に実施できなかった③二種類以上の機能触媒共存下でのマイクロ波照射効果に取り組む。 また、(II)電気化学的手法による機能触媒の制御に関する試み、と、(III)の光学的手法による機能触媒の制御に関する試み、については、一部取り掛かったものの電磁気学的手法に比べて極めて効果が薄いことが示唆され、本年度に残りの検討項目を早めに進めて見込みがないと判断した時は年度初めに電磁気的手法に特化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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