2011 Fiscal Year Research-status Report
産業廃棄物からのケイ素試薬及び高機能シロキサン化合物の合成
Project/Area Number |
23655141
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
海野 雅史 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20251126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花屋 実 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50228516)
板橋 英之 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40232384)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シロキサン / 廃棄物利用 / リサイクル / ケイ素化合物 |
Research Abstract |
本年度は、廃棄物を処理して、ケイ素を高濃度で含むサンプルの調製と、得られたサンプルの構造に関する測定、さらに、これらのサンプルをケイ素化合物へ導くための反応のモデル反応を行った。 まず、太田市の家庭ごみの焼却物を飛灰と主灰に分類し、主灰をこれまでに報告している方法で処理し、重金属を除去した。生成物を測定した結果、重金属は存在せず、また、得られた分画の一つには、ケイ素が高濃度で含まれる(重量比で80%以上)ことが明らかになった。以降の検討には、処理の段階で行う水酸化ナトリウム水溶液による洗浄において、1MのNaOH水溶液を用いたものと3MのNaOH水溶液を用いた2種類のサンプルを用いた。 次に、得られた2つのサンプルについて、熱重量分析(TG-DTA)を行った。800度まで加熱したところ、1M NaOH水溶液で洗浄したサンプルは11%、3M NaOH水溶液で洗浄したサンプルは13%の重量減少が確認できた。いずれのサンプルにおいても、ほとんどの重量減少は200度までで起こっており、200度から800度までは数%程度の減少にとどまっていることから、得られたサンプルではほぼ完全に縮合したケイ素酸化物であることが確認できた。200度までの重量減少については、空気中で保存中に吸着した水分であると考えられる。実際にサンプルを空気中で保存しておくと、重量の増加が確認できた。 最後に、廃棄物からのサンプルをケイ素化合物へ導くため、構造が決定しているシロキサンを用い、ケイ素ー酸素結合を開裂するモデル反応を行った。試剤としてアミン塩(テトラブチルアンモニウムフロリド:TBAF)を用い、マイクロウェーブ合成装置で加熱をしたところ、結合の開裂が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としてあげていた産業廃棄物からのケイ素酸化物の抽出に関しては、条件を検討することで高濃度でケイ素酸化物を含むサンプルを得ることに成功した。また、得られたサンプルについて分析をおこなうことにより、構造についての知見が得られた。 次に、ケイ素酸化物からケイ素材料へ変換を行うための反応条件を探索したが、テトラブチルアンモニウムフロリドを用い、マイクロウェーブ合成装置による熱反応により、シロキサン結合を開裂することができた。 以上のように、本年度の目的としてあげていた項目はすべて達成することができ、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際に産業廃棄物から得られたサンプルを用い、テトラブチルアンモニウムフロリドを触媒とするアルコール等との反応を試みる。これにより、廃棄物から骨格が規制されたシロキサンのアルコキシドが得られることを期待しているが、条件を検討して高収率で目的物が得られるようにする。また、アルコキシシランだけではなく、ハロゲン化試薬を用い、ハロゲン化シロキサンを合成することも検討する。 廃棄物処理サンプルの構造に関しては、さらに、NMR等の測定を行い、実際に含まれているケイ素酸化物の構造がどのようになっているか、また、同一の骨格を有する化合物がどの程度含まれているかを決定する。この結果により、目的とする化合物を定め、上に述べた反応条件の検討により高収率転換を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本年度同様消耗品を中心とした物品費、さらに、当該関連研究に関する情報を得るための学会参加費(旅費)を用いる予定である。本研究に関しては、既に獲得している、あるいは次年度以降に請求する助成金、研究費はなく、当研究費のみを用いて研究を進めていく。
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