2011 Fiscal Year Research-status Report
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23655143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岡田 友彦 信州大学, 工学部, 助教 (30386552)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 構造色 / スメクタイト / 単分散粒子 / フォトニッククリスタル / 表面修飾 / 吸着剤 / 光学センシング / コアシェル粒子 |
Research Abstract |
天然物のみでVOC(揮発性有機化合物)検出用光学センサーの設計を目指すことを目的とした。理想的な原料は,天然の粘土鉱物とアミノ酸(またはタンパク質)である。層状の粘土鉱物(以下,粘土鉱物と呼称)とアミノ酸との複合体を規則的な球状粒子に被覆した粒子を調製し,これを基板上に配列するという方法で設計する。VOCの吸着に伴って,球状粒子の体積が増加すれば,同時に球状粒子間距離が増大するので構造色の変化が期待できる。この原理に基づいてVOC検出が可能か実験的に検討する。本系の特徴は,感応体に色素などの発色団を必要としないことである。 初年度は,単分散球状シリカ粒子表面への粘土鉱物の被覆を試みた。球状シリカと粘土鉱物源としての塩化マグネシウムおよびフッ化リチウムを尿素共存下で水熱反応させると,シリカ表面を粘土鉱物で被覆したコアシェル型粒子を調製できることがわかった。ここで尿素は水熱条件で加水分解されて水酸化物イオンを生成し,粘土鉱物の構造成分の水酸化マグネシウムが生成する。同時にシリカ粒子も溶解しこれが粘土鉱物源として作用するいわゆる犠牲鋳型法により調製できると結論した。調製したコアシェル粒子へは陽イオン性の界面活性剤が吸着されたこと,X線回折分析および電子顕微鏡観察から層状ケイ酸塩特有の構造がみられたことから,シェル成分は粘土鉱物(スメクタイト)であることを確認した。また,調製したコアシェル粒子をガラス基板に塗布すると青色を呈し,その色は入射角依存性がなかったことから,三次元のフォトニックバンドギャップによる構造色が発現したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書で記載した平成23年度計画分(球状粘土鉱物の調製と成膜,および粘土鉱物層間の有機修飾)の内容は概ね実施できた。天然の粘土鉱物を被覆するという点においては,計画通りの方法では球状とするのが難しく,水熱反応によりシリカ表面に犠牲鋳型法で粘土鉱物を被覆するという方法に切り替えた。その結果,性能としては当初計画したものと同等の粒子を得ることができた。ここまでの成果を学会発表した(2012年3月日本化学会年会)とともに原著論文として投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
粘土鉱物を被覆したシリカ粒子の調製方法に一定の目処がつき,かつイオン交換性(インターカレーション能)を有することがわかったので,2年目はアミノ酸またはタンパク質との複合化を中心に光学センシング材の調製を引き続き行う。粘土鉱物の有機修飾はVOCとの相互作用を強め,膨潤を誘起するために行う。さらにVOC共存下で構造色の変化の有無について実験的に検討する。23年度の結果から,VOC吸着に伴う構造色変化を誘起するには,鋳型としてのシリカ粒子のサイズをやや大きくするなど,改善の余地があるので,この点を含め粒子の調製法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
若干の剰余金が生じた理由は,種々の天然の粘土鉱物の購入をやめたためである。24年度では粒子サイズの異なるシリカ粒子の購入,アミノ酸またはタンパク質等の有機修飾種を購入する,VOC用ガスチャンバーを組み立てる費用等にあてる予定である。
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