2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60221925)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イオン液体 / 二酸化炭素 / 光還元 |
Research Abstract |
今年度まず、二酸化炭素が還元されることによって生じる一酸化炭素の定量的な検出をおこなうために、ガスクロマトグラフを入手し、流出したガスの成分分析を行えるようにした。計画では流通型の反応容器を作成する予定であったが、ガスクロの感度、反応収率などを考慮しバッチ型の処理で初めは検討することにした。実験当初は現有の高圧光学セルを用いて研究を進めた。その後、内部セル方式の反応容器の作製をおこない、それをつかって実験に取り組んだ。まずレニウム錯体([Re(bpy)(CO)3L] (L= Cl)を市販のクロロ錯体(Re(CO)5Cl)を出発原料として、置換錯体を合成し反応触媒として用いた。高圧水銀ランプをもちい、364nmの紫外光のみをバンドパフィルターで取り出し、NDフィルターで光量を調整しながら二酸化炭素加圧下での実験をすすめた。イオン液体としては典型的なイミダゾリウム系のイオン液体およびUV領域まで光吸収のないアンモニウム系のイオン液体を用いることで触媒の光反応特性を検討した。アンモニウム系のイオン液体を用いた場合、光照射によって反応剤として加えているトリエタノールアミンが相分離を起こすという興味深い現象を見出した。しかしそのためアンモニウム系では反応が進まなかった。一方イミダゾリウム系では反応が進むが、収率が非常に低くまた光照射による触媒の分解などが生じていることが分かった。さらに、反応容器の死体積が大きく、COの検出効率を下げていることなどが明らかとなった。一方で二酸化炭素混合系の溶媒特性を検討するため、時間分解蛍光測定をもちいて、二酸化炭素加圧によって溶媒ダイナミクスがどのように変化するか測定した。その結果、炭酸ガスの加圧によって溶質分子周りの溶媒の運動が非常に加速されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
反応システムの構築はおおむね予定通りに推移し、ガスクロマトグラフィーの導入や新たな高圧反応容器の作製など順調に推移している。ただし、高圧容器の作製において気体領域の部分の体積が現状では大きく、発生する一酸化炭素の検出において問題を生じている。この点の改良が今後の大きな課題と考えている。光還元反応においては触媒の合成をおこない、典型的なイミダゾリウム系およびアンモニウム系のイオン液体について反応の検討をすすめたところ、一部のイオン液体では二酸化炭素の導入に伴い反応物の相分離が起こるなど思いがけぬ現象が生じた。またイミダゾリウム系の溶媒では、現状では予想外に反応効率が悪いので、イオン液体の種類をもう少しひろく検討することが必要nな状況となった。一方で二酸化炭素との混合系における物性評価については、論文となる仕事を仕上げ順調な流れとなっている。これらの状況から成果の出ている部分もあるが、全体的に見てやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究においては、まず高圧容器のさらなる改良をおこない、一酸化炭素の検出効率を高める。そのために高圧容器の内部を加工し、気体領域の死体積が少なく、かつイオン液体と気体がよく混合するようなシステムに系を改良する。また昨年度の成果により典型的なイミダゾリウム系やアンモニウム系のイオン液体では必ずしも光還元反応に最適ではないことが明らかになってきた。したがって、イオン液体の種類をもっと網羅的に検討し、最適な系を見つける。その際、イオン液体のもつ種々の動的な物性を評価し参考にしながら、種類の選択を進める。触媒についても、前年度一種類しか検討できなかったので、配位子をかえてイオン液体に対する安定性ならびに光還元の効率を検討する。光還元以外の電気的な手法も合わせることも含めて検討していきたい。またイオン液体と触媒の連結化合物についても有機化学者の助言を得ながら検討を進める。以上の研究を推進し、還元に最適なシステムの探索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度明らかになった反応システム上の問題をクリアするため、反応容器のさらなる改良が必要である。ただ、次年度より研究代表者が研究機関を異動することになり、年度をまたぐ形での装置の製作依頼など難しい状況であったため、予算の一部を繰越して次年度に活用することとした。繰り越した研究費の一部はこの高圧容器の改良に用いる。また、昨年度の成果により典型的なイミダゾリウム系やアンモニウム系のイオン液体では必ずしも光還元反応に最適ではないことが明らかになってきた。したがって、イオン液体の合成や購入に経費を投入し、次年度予定している経費と合わせて実験を推進していく予定である。
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Research Products
(1 results)