2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波照射による無細胞発現系への活性化技術の開発
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23655146
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉村 武朗 東京理科大学, 理工学部, 助教 (10580938)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロ波 / 無細胞蛋白質発現 |
Research Abstract |
本研究の要諦は、宿主に左右されない簡便な蛋白質作製法である無細胞発現系の超高率化のために、熱伝導と異なる加熱メカニズムのマイクロ波を用いることである。科研費によりカスタマイズした微量スケール用マイクロ波照射装置を導入させて頂いた。 研究のストラテジーとして、最初に私がこれまでおこなってきたマイクロ波遺伝子反応(MW-Rolling Circle Amplification)を対照実験として、酵素反応に最適化したマイクロ波照射装置の性能評価をおこなう。同時期に無細胞発現系の選定、通常加熱での発現法の確立をおこない、装置完成後にマイクロ波照射による無細胞発現系の加熱実験をおこなう。研究の急所は、マイクロ波照射装置の信頼性にあると考える。 平成23年度の進捗状況は、無細胞発現系の選定を完了させ、マイクロ波照射装置の性能評価と改良をおこなっている段階である。無細胞発現系は、第6回無細胞生命研究会(兵庫県立大学)に出席し情報収集をおこなった結果、これまでの実績とコスト、今後の研究の広がりを踏まえて大腸菌の再構築系PURE-Frexを採用した。本研究が成功した際は、大腸菌無細胞発現系と微生物のモデル生物である大腸菌へのマイクロ波照射による影響との相関性や比較が可能なため、さらなる研究の発展が期待できる。マイクロ波照射装置の性能評価については、マイクロ波の周波数や出力、温度制御など適切な精度を出すために、評価と改良を繰り返している段階である。当初から微量試料を想定したマイクロ波照射装置のカスタマイズ品を作製して頂き、さまざまな改良や検討をおこなった結果、温度制御に光ファイバー温度計が不可欠であることが分かった。平成24年度の予算で光ファイバー温度計を導入し、マイクロ波制御系を変更して装置の早期完成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は一年間で、カスタマイズした微量反応用のマイクロ波照射装置(2.45 GHz)を用いて、対照実験のMW-RCA反応で様々な基礎データを出している予定であった。現状は、マイクロ波照射装置完成の最終段階である。 達成度が予定より遅れている理由は、精度の高い新型の装置を作り上げるうえで、色々な問題点を改善する必要があったためである。装置の精度や信頼度が研究結果を左右するため、周波数を2450MHzプラスマイナス0.2%の精度で出すように仕様を変更、温度制御のための赤外線センサーによる温度測定部位の変更、試料容器の検討、試料スケールの検討、共振空胴の試料投入部位の変更などの改善をおこなった。現在、より正確な温度制御のために光ファイバー温度計を23年4月に装置組み込みを完了し、装置の完成予定である。 装置が出来上がれば、結果を出す仕組みが出来たと言え、あとは次々と酵素反応や無細胞発現系を試せば、2.45GHzのマイクロ波照射による結果は得られるため、これから当初の予定に十分に追いつくことができると考える。本研究はアイディアと装置の精度が、研究結果の8割を占めると考えており、今のところ当初の予定は達成できていないが、着実に地歩を固めているという認識である。
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Strategy for Future Research Activity |
最優先課題は、共振空胴型マイクロ波照射装置の完成である。本研究は、挑戦的萌芽研究として未知の研究に取り組むため、装置の出来不出来が結果の信頼性に大きくかかわってくる。装置会社に協力して頂いて、ハードとソフトの両面から少しずつ改善しており、投入予定の光ファイバー温度計を組込み温度制御によって完成予定である。 装置完成後は、これまで私が研究してきた遺伝子増幅反応(MW-RCA)で装置で性能評価をおこなう。その後に、再構築系の大腸菌無細胞発現系PURE Frexのコントロールプラスミドを用い、蛋白質発現の高効率化を目指す。また、蛋白質発現のプラスミドを複数保有しているため、それらプラスミドでもマイクロ波照射をおこなう。さらには、他大学の無細胞発現をお使いの先生から装置を使いたいとの申し出もあり、無細胞発現に関する情報交換や新しい結果が発見されれば、研究の目標は達成可能であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月中に平成24年度予算の40%を投じ、光ファイバー温度計を導入予定である。光ファイバー温度計の投入により、電磁場による影響を避けながら温度測定が可能になり、装置の完成度と信頼性、さらには他研究者との競争力まで高められると考える。 また研究費の20%は、当初の目的達成のため再構築系の大腸菌無細胞発現系PURE Frexに投入予定である。PURE Frexで成果がでれば、コムギ胚芽系や昆虫細胞系などの無細胞発現系に研究費を投入し、マイクロ波無細胞発現系の応用可能性を探索する。また、無細胞発現系のバリエーションを増やす方向ではなく、大腸菌の無細胞発現PURE FrexとMW-RCAで用いるDNA polymeraseを用いたマイクロ波照射による影響を比較し、2.45GHzのマイクロ波が酵素反応のどのファクターに影響をおよぼしているかを明らかにする方向へ研究を進めることも検討している。マイクロ波照射装置の完成とMW-RCAの結果を踏まえながら、インパクトの大きい方へ研究費を投じたいと考えている。
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