2012 Fiscal Year Research-status Report
赤血球ゴースト膜を基にした環境適応型ミクロ反応器の作製-化学発光による検討-
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23655148
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
大久保 惠 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90132555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 貴之 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10290686)
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Keywords | 赤血球ゴースト膜 / リポソーム / ミクロ反応器 / 蛍光物質 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 蛍光反応 |
Research Abstract |
赤血球ゴースト(WG)膜系と人口膜のリポソーム系という限定されたミクロ空間に反応物質を閉じ込め、膜系を融合合体させることにより反応物質の接触を制御し、必要量だけを生成する新規の極小反応器およびシステムを開発するという目的で研究を進めている。極小反応場という限定された環境条件であるため反応の確認には蛍光発光が適当と考えて蛍光反応を示す物質の組み合わせに着目している。 主にWG膜内及びリポソーム内への蛍光物質の封入性の評価を行った平成23年度に引き続いて、平成24年度は、(1)WG内を利用した化学反応系を具体化する、(2)リポソーム内での化学反応系を実現させ、(1)との比較評価を行う、(3) 化学反応の類型比較のため光合成膜系の分析にも取り組んだ。 (1)については、別々のWGに蛍光共鳴エネルギー移動反応(FRET)を起こしうる蛍光物質をそれぞれ封入後、WG膜の融合操作を行い、蛍光顕微鏡観察および蛍光スペクトルの観測によりFRETを捉えることができた。具体的にはアクリジンオレンジ-ローダミンB系、チオフラビンT-アクリジンオレンジ系、オーラミンO-ローダミンB系で確認できた。これは2種の蛍光物質が接触し、蛍光エネルギーの移動反応が進んだことを示すものとなった。(2)に関しては、リポソーム間においても上述のFRETが観測され、人工膜系でも相似の性質が確認された。蛍光反応以外の化学反応に拡張する必要性を感じさせるものとなっている。(3)については光化学反応の類型比較のため耐熱性光合成膜の色素の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の設備導入の遅れが研究の進捗状況に影響したこともあり、約半年間研究補助員を1名採用して試料作りや測定を担ってもらい、研究の進展を図った。その結果、リポソーム内および赤血球ゴースト膜内単独の蛍光発光の観測を終え、同種間の膜同士の融合による蛍光共鳴エネルギー移動反応を観測できた。これにより融合膜内で異なる二種類の蛍光物質の接触・蛍光反応を実現できるようになった。異種膜間の蛍光反応までは実施できていないものの研究の要になる部分が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
内容的には、3種類の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用してWG同士、リポソーム同士の融合による合体膜系内での反応を把握することが可能になった。 今後の方策としては、蛍光物質の発光反応および消光反応をWG-リポソーム融合系を含めて膜融合システムに組み込むことを進める。発光反応としてはFRET反応をWG-リポソーム融合系へ適用し、消光反応としてはモリン-金属イオン錯体の消光反応を膜融合系に組み込むことを予定している。これらの実験を通して反応生成物(消光反応の場合)を回収し、反応率を測定し、マイクロリアクターとしての可能性の評価を予定している。また、適当な系で封入蛍光物質の膜浸出の経時変化から徐放性の観測と光合成膜系の反応パターンとの比較についても予定している。 平成25年7月までに得られる成果を国際会議等に発表するとともに、最終的に得られる成果をとりまとめ、研究報告書として公表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(次年度に使用予定の研究費が生じた状況) 平成24年度に予定した予算のうち50万円弱を繰り越すことになった。これは平成23年度の設備導入の時期が後にずれたことによる研究の遅れを今年度は相当量取り戻したが、それでも十分には解消できず、次年度に実施することとなった。これと関連して調査・収集と研究成果発表のためアメリカでの国際会議の参加を予定していたが、研究のずれ込みにより平成24年度には実現できず、平成25年度に開催される化学系国際会議の参加などで対応することにしている。 (翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画) 前年度に予定していた研究分も含めて最終年度の研究遂行に欠かせない動物血液やリン脂質等の試薬類、蛍光セル等の実験消耗品、顕微鏡の観測アタッチメントの購入のほかデータ整理等を依頼する研究補助員に対する謝金など、研究を進展させるための支出を予定している。また、平成25年9月予定の国際会議等に参加し発表するための旅費に当てる予定である。最終段階では、研究報告書の発行費にも当てることになる。
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