2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655149
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
細矢 憲 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00209248)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫 / 生体適合性 / 共連続体 / 移植 / 膵島 / 糖尿病 / インシュリン / QOL |
Research Abstract |
平成23年度は下記に示す課題について検討を行った。1.反応誘起相分離を用いるナノサイズ細孔を有する有機高分子共連続体の合成 2.共連続体の物質透過,およびその速度の検討 3.生体成分や細胞組織の癒着の無い,生体適合性有機高分子の開発と,共連続構造体の開発 4.生体適合性の検討と,表面修飾による生体適合性のさらなる向上と安定性の確認課題1は本研究の最も大事な課題であり,重点を置いて研究を行った。その結果,一般に用いられるラジカル重合において反応系の粘度,極性を制御し,さらには,光重合との組み合わせを行うことでナノサイズに近い構造を有する共連続体の合成が可能となった。また,一般に生体適合性が高いといわれる酸素原子を含むモノマーの使用においては,その性質上ラジカル重合を用いられない場合もあり,今回特に,比較的温和な条件で用いることが可能なカチオン重合を応用し,系の相分離の制御を行うことで,ナノサイズに近い細孔を有する共連続体の開発に世界で初めて成功した。 課題2の物質透過性に関しては,特に生体内での使用を考慮して,水の透過に関して検討を行った。素材の強度を下げ,柔軟性を持たせると,水の透過性は低下傾向にあったため,柔軟性を維持したまま骨格強度を上げる試みを行ったところ,微細粒子のハイブリッド化により,それらが改善し,水の透過,吸水が改善されることが明らかとなった。 課題3,4に関しては,震災影響で評価を行って頂くはずの大学病院での実験が滞り,現在,主にタンパク質を対象とした非特異的吸着の有無を中心として検討を進めている。初期的な結果として,非特異的タンパク吸着を極限まで抑えることが可能な素材の開拓には目処が立ちつつあり,これらと課題1,2との連携を進めつつ,平成24年度において成果のジャンプアップを期したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体適合性の検討における大学病院での細胞等を用いる評価に震災影響の遅れが若干認められるが,生体成分(タンパク質)での検討において充分に予定していた検討を行えている。加えて低分子に対する挙動も検討が進んでいる。また,最も重要な課題であった課題(1),つまり,共連続体の合成において,新規な方法を含めて今後の研究を加速するに充分な成果を得ることが可能となっており,差し引きしても,概ね順調(以上)に進展していると確信している。病院での評価数の低減により,予算的には次年度への繰り越しが多くなっているが,上記のように成果は出ているため,研究遂行には直接結びつくものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果を発展されるために,素材の生体内での適合性について検討を進め,併せて下記の検討を行う。1.共連続体膜の成形について,膜を得てから光重合を用いる接着に基づく「袋化」 2.袋が得られる「鋳型」の中での重合→共連続体袋の開発 3.共連続体袋が低分子を透過し,細胞等を透過しないかの確認課題1および2に関しては,得られた候補共連続体膜の成形に関わる課題であり,予備的な成果を得つつある。また,共連続体の形成と同時に成形する方法に関しても検討を行う。課題3については,本研究の一応のゴールと考えているが,成形された袋の透過性検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特に実際の系に近い環境での試験に主眼を置き,23年度で得られた成果を基に,まず,それらが実環境で機能するかを早急に確認する。基本的に素材の生体適合性については確認を終えているので,化合物応答性や,細胞の生存性について検討を行う。これに23年度からの持ち越している費用を充当する。また,これらに関連する物品費として充当する。このことと同時に共連続体の袋化,さらには細孔構造制御を詳細に検討し,メディアの完成を目指す。平成24年度配当分について,この検討に充当する。
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