2011 Fiscal Year Research-status Report
出芽・分裂を起こす人工細胞創成のためのde novoデザイン
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23655156
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 純一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90153056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安原 主馬 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (90545716)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 超薄膜 / 超分子化学 / 分子認識 / 脂質 |
Research Abstract |
本研究では、細胞の分裂現象の重要性に着目し、生体系とは異なる原理をもちいて、出芽と分裂を自在に制御できる人工細胞のde novoデザインについて研究を行う。具体的には、まず、(1)モデル細胞膜系において、出芽・分裂を起こすための物理化学的因子を探索し、それにもとづいて、(2)出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザインの指針を提示するとともに、その検証を行う。さらに、(3)モデル細胞膜の出芽・分裂にともなう機能を活用して、高次の物質輸送や情報伝達が可能な人工メンブレントラフィックシステムの開発を目指した。平成23年度は、(1)及び(2)について検討を加え、以下の成果が得られた。1.脂質膜による化学シグナルの分子認識に関する検討を行うために、イオン性頭部をもつ人工脂質を設計し、その合成を行った。人工脂質には、その後の膜ドメイン形成に影響を与えると考えられる水素結合による脂質間認識部位を導入した。この人工脂質とリン脂質の二成分混合系で形成されるジャイアントベシクルについて、種々の蛍光性シグナル分子との相互作用を評価したところ、シグナル認識には、静電的多点相互作用が有効であることがわかった。2.化学シグナルの認識によって誘起される膜ドメイン形成挙動を評価したところ、本研究で用いた混合脂質系では、シグナル認識に引き続き、膜ドメイン形成が進行することを明らかにした。3.この系では、膜ドメイン形成に引き続き、膜の出芽・分裂挙動も観測されたが、このような膜の動的挙動は温度、pH、イオン強度などの物理化学的因子によって支配されることがわかった。4.以上の検討結果をもとに、出芽を伴う膜分裂を進行させるための化学シグナルや膜形成脂質の構造因子、ならびに外部制御因子の最適な組み合わせや許容範囲が明らかになり、出芽・分裂を起こす人工細胞膜の設計指針を提示することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に計画していた(1)モデル細胞膜系において、出芽・分裂を起こすための物理化学的因子の探索と、それにもとづく(2)出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザインの指針の提示が、いずれも達成されたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
出芽・分裂を起こす人工細胞膜のde novoデザインの指針をより明確にするために、前年度の研究をさらに積極的に推し進めるが、それに加えて、膜の出芽・分裂現象を組み込んだ人工メンブレントラフィックシステムの開発へと展開する。すなわち、生体系には、細胞膜表面からエンドソームへの物質輸送や、小胞体からゴルジ体へのタンパク質の輸送等、重要な生体分子を膜小胞に包んで輸送するメンブレントラフィックシステムが多数存在する。これらのプロセスには膜の出芽と分裂が含まれており、生体機能発現にとって重要かつ不可欠なプロセスであるが、人工系でこのようなメンブレントラフィックシステムを創出した例はこれまで知られていない。そこで、本研究では、申請者らが開発する膜の出芽・分裂系を利用して、人工のメンブレントラフィックシステムの構築を行う。具体的には、ドナーベシクル内の蛍光ラベル化タンパク質をアクセプターベシクルに輸送する系の構築を目指す。測定にはジャイアントベシクルを試料に用いて、高解像度のビデオ撮影が可能な光学顕微鏡により、位相差モードならびに蛍光モードで観察し、評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、配分予定額900千円のうち、600千円を薬品、ガラス器具、プラスチック器具、論文別刷などの物品費に使用する。また、200千円を研究成果発表のための旅費に、100千円をその他の経費として印刷費や学会誌投稿料に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)