2011 Fiscal Year Research-status Report
新規タンパク質発現抑制法ドメイン干渉によるヒトPDI及びsEHの機能解析
Project/Area Number |
23655162
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今岡 進 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60145795)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ドメイン干渉 / PDI / sEH / HEK293 / GH3 |
Research Abstract |
当該研究は、ドメイン干渉を哺乳動物に応用する試みである。ドメイン干渉とは、大腸菌中のあるタンパク質のドメインを過剰発現させると、大腸菌の中で生合成されつつあるそのタンパク質が、このドメインと相互作用することで、それ以上翻訳されなかったり、あるいはうまくフォールディングされないことで、分解が促進される新しいタンパク質発現抑制機構である。このような反応が哺乳動物で起こるかどうか、全く不明である。そこで、このターゲットタンパク質として、当研究室で現在機能解析が進行中であるプロテインジスルヒドイソメラーゼ(PDI)と可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)を材料にして検討を行った。まず、PDIについて検討した。PDIはa,b,b’, a’ドメインから成り、すでに、b’とa’が相互作用することを明らかにしている。そして、a’はイソメラーゼ活性中心を有しているが。b’とa’との相互作用によってa’の活性が増強することを明らかにしている。そこで、bとb’をラット脳下垂体GH3細胞に過剰発現してPDIの発現量の変化を検討したが、bは過剰発現されるものの、b’には十分な過剰発現がなく、その影響を明らかにするには至らなかった。 そこで、大腸菌で二つのタンパク質を同時に発現する系を構築して、PDIとbまたはb’を過剰発現してPDIの発現量を検討している。一方、sEHはホスファターゼ活性を持つN-末端ドメインとエポキシドヒドロラーゼ活性を持つC-末端ドメインがあり、2個のタンパク質がそれぞれのドメインで相互作用し、二両体を形成して安定化していると考えられている。ヒト肝がん細胞Hep3Bに、sEHのN-末端またはC-末端ドメインを過剰発現すると常在しているsEHの発現の低下がみられ、ほ乳細胞でもドメイン干渉が起こる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大腸菌で見いだされたドメイン干渉(ドメイン同士が相互作用することで、タンパク質の発現が低下する現象)が、哺乳動物でも起こるかどうか、さらには起こす条件やタンパク質の種類を明らかにし、哺乳動物における、一般的なタンパク質発現抑制法に発展させることを目的とする。当該研究では代表者がターゲットとしているタンパク質で、ドメイン構造がしっかりしており、ドメイン同士の相互作用も明らかにしているプロテインジスルヒドイソメラーゼ(PDI)と可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)を材料にして検討を行った。まず、PDIについて検討した。PDIはa,b,b’, a’ドメインから成り、すでに、b’とa’が相互作用することを明らかにしている。細胞で発現できる様々なドメインコンストラクトを作成し、ラット脳下垂体細胞GH3で発現した。ほとんどの作成したドメインは細胞での発現が成功した。しかしもっとも重要であるb’ドメインが発現されなかった。この原因については現在検討中であり、これ以上の研究は進められない状況にある。一方、sEHはホスファターゼ活性を持つN-末端ドメインとエポキシドヒドロラーゼ活性を持つC-末端ドメインがあり、2個のタンパク質がそれぞれのドメインで相互作用し、二両体を形成して安定化していると考えられている。ヒト肝がん細胞Hep3Bに、sEHのN-末端またはC-末端ドメインを過剰発現すると常在しているsEHの発現の低下がみられ、哺乳細胞でもドメイン干渉が起こる可能性が示された。さらに、今後この機構を解明したいと考えている。さらに、ドメイン干渉は元々大腸菌で見いだされたことから、大腸菌で二種類のタンパク質を発現する系を構築した。たとえばこの系で、PDIと様々なドメインを動じ発現して、それぞれの発現量を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、大腸菌を用いて完成されたドメイン干渉を哺乳動物で検討すべく以下の実験1~3について検討を行う。大腸菌におけるドメイン干渉実験においてタンパク質の種類によって発現が抑制できるものとできないものがある。これはおそらくドメイン構造及びそのドメイン同士の相互作用の違いによると考えられる。そこで、ヒトのタンパク質においてもその条件に当てはまるものを探す必要があるため、以下に具体的な実験計画を示す。1.大腸菌を用いた検討これまでの検討で大腸菌を用いて、二種類のタンパク質またはペプチドを発現する系を確立したので以下のほ乳細胞と同様の検討を行う。2.PDIについてほ乳細胞での検討PDIファミリータンパク質のうち、PDI, ERp57, ERp72はドメイン構造が特に類似しているので、これらの各ドメイン変異体を作成し細胞に導入し、元々のタンパク質の発現量が変化するかどうかを検討する。先に述べたようにPDIについては、様々なドメイン変異体を作成しているが、重要と思われるb’ドメインの発現はうまくいっていない。そこで、ERp57, ERp72についてもPDIと同様に、大腸菌で発現系を用いて検討するとともに、ドメインを細胞に導入して、元々のタンパク質の発現量変化を調べる。ドメイン干渉が成功すれば、そのドメインの相互作用等を詳しく検討してそのメカニズムを解明する。3.sEHについての検討ドメインを大腸菌で発現精製して、ドメイン間の相互作用を明らかにする。なお、ドメイン間の相互作用については、代表者はBiacore(表面プラズモン共鳴)を使用する方法やネイティブ電気泳動をする方法を確立している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が年度途中で療養のため入院したため、年度の後半は当初予定していた実験規模を縮小して研究を進めたことから、当初の予定よりも試薬などの物品購入が少額であり、未使用額が発生した。これについては、平成24年度の使用計画と併せて上述の今後の研究の推進で述べた計画を実施するために、細部培養のための試薬、コンストラクト作成を確認するためのDNAシークエンス用の試薬、Biacoore用のチップの購入に使用する。
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Research Products
(7 results)