2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655164
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡部 暁 独立行政法人理化学研究所, NMRパイプライン高度化研究チーム, 上級研究員 (80300945)
|
Keywords | DNA / 複製 / 再構成 / cis-特異的 / 無細胞合成系 / 抗体 / 分子進化 / 合成生物学 |
Research Abstract |
本研究は外部因子に依存して特定の配列をもつプラスミドが複製・増幅される系の構築を目的としている。前年度(平成23年度)の結果より、効率的な複製には1.高純度な再構成系の構築、2.指数関数的な増幅機構の導入、3.複製開始因子のスプリット化が重要であることが明らかになったため、本年度は各々の準備を進めた。 1.H23年度はクルードな抽出液を用いて検討を進めたが実用的な効率という観点からは夾雑するDNAase活性が障害であった。そのため、平成24年度は既知の18種のタンパク質因子について単独発現系を用いて高純度の精製品による再構成系構築の検討を進め、多くの成分について高純度標品を得た。単独で不溶性で高純度品を得られなかった一部の因子については複合体発現系での高純度品調製の検討を進めた。2.指数関数的な増幅のためには、「複製の開始、伸長、娘プラスミドの分離、娘プラスミドの複製開始」といった一連のサイクルを完全に再現すればよいため、近年明らかになってきた大腸菌由来の天然の分離装置XerC/XerD/FtsKの導入と再構成の検討を進め、各因子について発現を検討したところ、いずれも良好な発現が確認された。3.複製開始因子RepAタンパク質のアミノ酸配列から2次構造予測および天然変性領域の探索を行い、スプリット化のサイトとして有力である構造非形成と予測される領域で断片化されたRepAを多数設計し、それぞれN末断片とC末断片の発現を検討を行ったところ、いずれも良好な発現が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複製開始因子RepAおよびそれ以外の複製を構築する因子群および分離酵素群からなる高効率な完全複製再構成系の再構築するためには高純度品を得る必要があるが、因子の多くは安定かつ可溶性に存在し高純度品の調製が容易に達成できたが、一方で、一部の因子は不溶性や不安定など単独での高純度品を得るという観点では物性が悪いことが分かった。単独で高純度品の準備が容易ではない場合には、複数因子の複合体として高純度品を準備することが定法であるが、構成する因子数が数十という多因子であるため、構成する因子数の掛け算で生じる複合要因の検討のための実験を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
単独で高純度標品が得られていない一部の因子について、安定な複合体を形成することが知られているパートナー存在下での発現と、同時に複数因子の発現を行う共発系の検討を進め、複合体発現系での高純度品調製の検討を更に進めることで高純度の再構成系により複製効率の評価系を構築する。この評価系により、複製の開始、伸長、娘プラスミドの分離、娘プラスミドの複製開始といった一連のサイクルの各工程での効率を評価して各工程の効率化する。特に律速となる工程が明らかになれば、その工程を特に重点的に効率化・改善することで系全体としての高効率化を実現する。複製開始因子RepAのスプリット化については既に構築済みの発現コンストラクトから、同じ評価系により最適なコンストラクトを探索する。スプリット化RepAと複製系のシステムの構築後は、単鎖抗体の可変領域にランダム変異を導入した単鎖抗体の可変領域にランダム塩基を導入したライブラリーを発現させ、スプリット化RepAをレポーターとして用いた酵素相補アッセイにより、特定のペプチドエピトープを特異的に認識する単鎖抗体遺伝子とそうでない遺伝子の増幅挙動を分析することで選択性と増幅効率の実証実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度までに実施された要素技術の準備実験の結果を受けて、各要素技術およびシステムの完成のための実験が、当初予測よりも時間を要することが判明したため、一部、H24年度内での実施が見送られた。その消耗品費用として計上されていた費用および成果報告に要する費用として計上されていた費用については支出が困難であったため未使用額が発生した。当初予定よりも増えた検討実験の費用については残予算を合理的に運用することにより大幅な変更は必要ないと考えている。H25年度における未使用額の使用用途としては、実験試薬(消耗品)、旅費、論文校正費用を見込んでいる。
|