2011 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化有機無機量子閉じ込め構造を利用した共鳴励起子状態の実現
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23655168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 圭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60231859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越水 正典 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374962)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ハイブリッド励起子 / ワニエ励起子 / フレンケル励起子 / 共鳴 / 有機無機ペロブスカイト型化合物 |
Research Abstract |
有機無機ペロブスカイト型化合物において、有機層の三重項励起状態と、無機層のワニエ励起子とが共鳴する材料を作製し、その共鳴領域における特異的な発光特性を観測した。具体的には、(C10H7CH2NH3)2PbBrxI4-x薄膜において、ワニエ・フレンケル励起子準位が共鳴領域近傍に存在すると推察されるx = 1.75及びx = 1.87の薄膜を作製し, 光学特性の解析を行った. それぞれの薄膜において, 490 nm及び500 nmにおいて発光ピークが観測された. 一方, x = 1.75及びx = 1.87の薄膜において, 520 ~ 566 nmにかけて発光ピークは観測されなかった. これらの発光ピークは, ナフチルメチル基における基底状態の異なる振動準位への遷移に対応する. 無機層における混晶形成に伴うわずかな構造変化により, これらの振動準位への遷移の禁制化による消光は生じないものと推察される. よって, ワニエ励起子のエネルギー準位に近いナフタレン三重項準位からの発光が選択的に生じたためであると考えられる. 以上の結果から, ワニエ・フレンケル励起子準位が共鳴領域近傍に存在することで, 特異な発光が生じることが示唆された.この結果は、当初目的としていた、有機無機共鳴励起状態における特異的な光学特性であると推察される。そのため、この化合物における励起子特性や、励起子形成後のダイナミクスについて詳細に調査し、共鳴励起状態の特性を明確にしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機無機の励起状態が共鳴していると推察される材料の合成に成功し、その材料中で、非常に特異な発光特性を観測した。この発光特性は、共鳴状態での振動子強度の集中に起因すると推察される。そのため、今年度の所期の目標を達成したと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には、有機無機ペロブスカイト型化合物の無機層の厚さを変化させながら、前年と同様に共鳴条件を探索する。無機層の厚さが、ハロゲン化鉛八面体の2~4個分の厚さの化合物を主に対象とする。ここでは、量子閉じ込め次元性が変化するため、ワニエ励起子の特性が大幅に変化する。そのため、ワニエ励起子の特性が、ハイブリッド励起子特性にどのような変化を与えるのかについて、議論を行うことが可能となる。試料の形態としては、主にスピンコート膜と単結晶とする。これは、合成中の溶液から析出した多結晶試料では、無機層の厚さの異なる試料が析出しやすいためである。光学特性の解析では、前年とほぼ同様の手法により、励起子共鳴状態に特有の光学特性を抽出し、議論を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、半導体材料の光学特性を取り扱う。半導体材料の光学特性は、一般に、微量の不純物混入によっても大幅に変化しうる。そのため、試料の原料として利用する鉛のハロゲン化物については、高純度の試薬を必要とする。半導体を構成するハロゲン化鉛の原料では、99.999%の高純度粉末を利用する。そのため、1種類の試料の合成につき、有機層の原料も含め、おおよそ5.5千円程度かかる。また、合成に要するガラス器具類も予定している。
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Research Products
(5 results)