2011 Fiscal Year Research-status Report
理想MIS界面の形成による有機FETの極限性能追求
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23655171
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 雅一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (80332568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 理想界面 / 半導体物性 / 有機トランジスタ / 結晶工学 |
Research Abstract |
本研究では、有機電界効果トランジスタ(OFET)におけるキャリア輸送の極限性能を確認し、その阻害要因を明確にするために、原子スケールで平坦(原子フラット)なゲート絶縁層と有機半導体層の界面(理想MIS界面)を形成することを目指す。そのために、絶縁性層状化合物であるマイカの劈開面などを利用した原子フラットゲート絶縁層/ゲート基板構造を形成する方法を探索する。その上に、自由空間で成長させた完全性の高い有機低分子単結晶を付着させる、あるいは、単結晶や多結晶膜を直接エピタキシャル成長させることによって、理想MIS界面を形成させることを目指す。 今年度は、まずマイカシートと支持基盤との接着法について検討を行い、ある程度の接着強度を得ることに成功した。それと平行して、マイカ基板の表面洗浄法について検討を進めた。マイカ基板上での有機低分子のエピタキシャル成長については、過去にもいくつかの報告例はあるものの、異なる研究機関での結果再現性が良くないということが知られていた。その理由として、極めて親水性の高いマイカ表面に雰囲気から水や汚染分子が吸着することや、天然鉱物であることから劈開面となる位置に不純物のインターカレーションが存在することが疑われる。そこで、劈開直後のものと酸化性の溶液で洗浄したものを基板とし、その上でのペンタセン結晶成長の様子を比べたところ、基板表面のXPSスペクトルに大差がないにもかかわらず、成長したペンタセン結晶における分子配向が全く異なるという現象を見いだした。これを利用することで、ペンタセンについて、原子フラットでない基板上に成長した薄膜と同じ結晶型および配向が得られる見込みが立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は今年度からの開始であるが、代表者の大学移動(5月)、実験設備移転(5月~6月)、新研究室立ち上げと新配属学生のトレーニング(6月~10月)があったために、実際に実験が始まったのは秋からである。また、移転前に予定していた予備実験も東日本大震災の影響で進まなかった。平成24年度からは研究分担者を加え、遅れを取り戻す計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度不十分であった本研究の目的に適した原子フラット基板の作成法について、新たに加わった研究分担者の協力を得て研究を加速する。また、今年度見いだした表面洗浄法による分子薄膜の配向変化について、多角的な分析からその原因を明らかにする。さらに、従来からよく研究されている凹凸のある絶縁層上に成長したペンタセン薄膜と、原子フラットな絶縁層上のものについてOFETを作成し、まずは多結晶状態でのキャリア移動度やバンド端ゆらぎの程度を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のように今年度の研究開始が遅れたため、研究に必要な装置器具類は確保して実験環境は整備したものの、原材料等の消費が少なかった。次年度は遅れを取り戻すために研究人員を増員するため、当初予定より原材料費に多くを当てる予定である。
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Research Products
(4 results)