2012 Fiscal Year Research-status Report
理想MIS界面の形成による有機FETの極限性能追求
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23655171
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 雅一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (80332568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 亮介 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (60611530)
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Keywords | 有機半導体 / 理想界面 / 半導体物性 / 有機トランジスタ / 結晶工学 |
Research Abstract |
本研究では、有機電界効果トランジスタ(OFET)におけるキャリア輸送の極限性能を確認し、その阻害要因を明確にするために、原子スケールで平坦(原子フラット)なゲート絶縁層と有機半導体層の界面(理想MIS界面)を形成することを目指す。そのために、絶縁性層状化合物であるマイカの劈開面などを利用した原子フラットゲート絶縁層/ゲート基板構造を形成する方法を探索する。その上に自由空間で成長させた完全性の高い有機低分子単結晶を付着させる、あるいは、単結晶や多結晶膜を直接エピタキシャル成長させることによって、理想MIS界面を形成させることを目指す。 今年度は、まずマイカ基板の表面洗浄法の有無によって全く異なる分子配向を有する2種のペンタセン多結晶薄膜について、原子間力顕微鏡およびX線回折を用いた結晶構造解析を行った。その結果、分子配向や結晶形態は大きく異なっているものの、いずれの膜もマイカ表面の6回対称な原子列を感じてエピタキシャル成長していることが明らかになった。 これと平行して、マイカを用いて原子フラットなゲート絶縁層/ゲート基板を作製することに成功した。それを用いてペンタセンを活性層とするOFETを作製したところ、移動度の温度依存性が従来のゲート絶縁膜を用いたOFETとは大きく異なることが示された。様々なモデルによる解析を行ったところ、マイカ上にエピタキシャル成長した膜では、隣接する結晶ドメインの向きが比較的揃いやすく、ソース電極からドレイン電極に至る全てのドメイン境界において大きなキャリア輸送障壁が存在しないような電流経路が部分的に生じること、加えて、強い分子/基板間相互作用により格子が歪むことで、ドメイン内に生じるHOMOバンド端プロファイルのゆらぎが大きくなるということを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するにあたり最も重要な課題は、原子フラットなゲート絶縁層/ゲート基板構造を作製することであった。今年度は、マイカを導電性基板上にあらかじめ接着してから劈開を行って薄膜化する実験技術を確立し、原子フラットなゲート絶縁膜を有するOFETを安定して作製することができるようになった。これにより、従来のゲート絶縁膜を用いて作製したOFETとの特性比較を行うことが可能となり、エピタキシャル成長した多結晶薄膜におけるキャリア輸送に関するいくつかの重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
原子フラットなマイカをゲート絶縁膜兼基板とするOFETのキャリア輸送特性を評価することができるようになったことで、当初予想とは異なり、エピタキシャル成長することによって結晶ドメイン内のHOMOバンド端プロファイルのゆらぎが大きくなることを見出した。この理由として、エピタキシャル的に成長するにも関わらず薄膜と基板の格子が不整合であるというファンデルワールスエピタキシー特有の性質が関与していると推測している。OFETではキャリア輸送がゲート絶縁膜との界面極近傍で起こるため、分子/基板間相互作用の空間的ゆらぎがキャリアの感じるポテンシャルに影響を与えやすいからである。これを確認するため、ペンタセン以外の有機半導体材料として、十分な長さの柔軟な側鎖を有するπ共役系低分子材料を活性層に用いて理想界面OFETを作製する。キャリアが輸送されるπ軌道と基板表面との間に構造緩和の機能を有する柔軟な側鎖を挟むことで、薄膜成長のエピタキシャル性を保ちつつ、キャリア輸送に対する分子/基板間相互作用の影響を小さくすることを試みる。側鎖の長さや種類を変えて、移動度の温度依存性やバンド端プロファイルを多角的に評価していく。 平行して、ペンタセンについても、成長時の基板温度や成長速度以外に、新たに入射する分子の運動エネルギーをパラメータとしてより結晶性の高い薄膜を成長させることを試みる。また、自由空間で成長させた単結晶を原子フラットOFET基板に貼り付けた単結晶OFETも作製し、キャリア輸送特性を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(9 results)