2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655177
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 謙司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20303860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 裕清 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40116190)
三崎 雅裕 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00462862)
小柴 康子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (70243326)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 有機強誘電体 / 分極制御 |
Research Abstract |
本年度は、有機半導体表面に強誘電性分子をナノ膜厚で堆積し、その分子膜の凝集構造、結晶構造、分子配向を詳細解析した。N型有機半導体としてC60薄膜上に、フッ化ビニリデンオリゴマー分子(OVDF)を低温クエンチ法にて膜厚1~100nmにて成膜した。フーリエ変換赤外分光装置による透過/高感度反射スペクトルの分子振動解析の結果、OVDF分子は膜厚1~40nmでは、分子軸を基板に対して垂直配向しており、膜厚40nm以上にて徐々に平行配向成分が増加することが判明した。基板温度や真空度、基板種、水分子混入による影響などを考慮した検証実験の結果、異種界面でのOVDF垂直配向は本質的なものであり、有機薄膜太陽電池への効率的な分極層挿入のためには、OVDF平行配向化のための前処理が重要であると判断した。強誘電性分子膜に内在する固定電荷、分極反転に伴う注入電荷に関して情報を得るため、熱刺激電流法および誘電分散測定も実施した。また幾つかの半導体薄膜、有機薄膜太陽電池の作製と基礎特性評価に加え、強誘電体双極子制御に利用予定であるコロナ分極処理が有機薄膜太陽電池に及ぼす影響を調査するため、素子構造ITO/ PEDOT:PSS/ CuPcにて、コロナ電界処理を行った後、BCP/ Al膜を形成して、有機薄膜太陽電池を作製し、その光電変換特性を調べた。コロナ処理前後を比較して、電流密度-電圧カーブの形状は大きく変化しないが、光電変換特性は低化した。またマイナス極性にてコロナ処理した素子の方が特性低下する傾向が見られた。本実験データは、CuPc/ C60界面に打ち込んだ電荷によってP/N界面に電界が生じ、素子内でのバンドマッチングに変化が生じた可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分極電場による有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率向上の可能性を検証するため、有機薄膜太陽電池を形成する有機半導体、電極の各界面に有機強誘電体薄膜をナノレベルで堆積し、その膜構造、電気特性変化の詳細解析を通して有機半導体/有機強誘電体界面における電気的相互作用の解明を目標にしている。本年度、実施予定であった有機半導体表面上への強誘電性分子の成膜とナノ膜厚分子膜の構造・配向評価を実施し、従来低温クエンチ法にて全て平行配向すると考えられていた強誘電性分子OVDFの分子配向に膜厚依存性があることを明らかにした。分極処理前後の有機強誘電体薄膜を対象に誘電スペクトル測定、熱刺激電流測定を実施し、成膜時に固定電荷が形成され、熱処理または分極処理により電荷放出されることを示した。コロナ分極処理の条件探索を行い、P型/N型有機半導体界面に正電荷/負電荷を注入することで有機薄膜太陽電池の光電変換特性は変化することを示す事ができた。これらの成果から予定していた研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度(H23)に得られた成果を基にして、電極/分極層/有機半導体/電極、電極/N型有機半導体/分極層/P型有機半導体/電極からなるキャパシタ構造において分極方向に依存した電流電圧特性に変化がでるか、強誘電性分子膜の膜厚変化に伴う電流電圧特性について詳細解析を進め、当該積層素子の基本特性を把握する。加えて、誘電スペクトロスコピー測定を行い、分極層による空乏層形成の可能性を検証する。分極層膜厚、光ON/OFF、測定周波数、印可電圧、温度などをパラメータとして詳細な評価を行い、空乏層の形成有無、形成された空乏層の厚みなど、ダイポールが空乏層形成に及ぼす影響を検証していく。最終的に有機薄膜太陽電池としての光-電気変換効率の測定を行う。開放電圧、短絡電流密度、フィルファクターなどの特性指標と有機強誘電性分子の膜厚、分極方向などとの相関関係を検証していくことで、分極層膜厚、挿入位置、分極方向について考察し、ダイポール電場と有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率との相関について得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分極電場が有機薄膜太陽電池の光電変換特性に与える影響を調査するためには、有機薄膜太陽電池および有極性分子膜の作製に必要な有機半導体材料、各種試薬、真空部品、基板、メタルマスクやデバイス評価に用いるカンチレバー、光学部品等の購入が必要となる。また昨年度の研究計画では雰囲気制御セルを自作し、デバイス雰囲気をパラメータとした実験を実施予定であったが、既存測定チャンバーの一部を改造することで予定実験が可能であることが判明したため、特注セルの作製を見送ることとした。H24年度はより広い条件パラメータでの実験を行うため、当該測定チャンバーの更なる改造が必要であり、その為の機械加工、電子部品などが必要となる。加えて、国内外の関連学会・会議に参加し、研究発表・情報収集することは重要であり、そのための出張旅費や会議参加費、論文印刷費が必要となる。
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Research Products
(10 results)