2011 Fiscal Year Research-status Report
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23655178
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西原 禎文 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00405341)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リボルバー型分子 / クラウンエーテル / イオンチャネル / リチウムイオン / 誘電性 |
Research Abstract |
本研究でターゲットとする「リボルバー型誘電分子材料」はクラウンエーテルと金属イオンからなる回転式拳銃のリボルバーに似た構造を有している.例えば、n = 6のクラウンエーテル([18]crown-6)とリチウムイオン(Li+)を組み合わせたとき,2つの酸素原子とリチウムイオンは電気的に結合することが報告されている.一方,Li+の安定配座はクラウンエーテルの対称性によって幾つか存在し([18]crown-6の場合は6カ所),各サイト間にはエネルギー障壁が存在すると報告されている.本研究では,キャビティ内の金属イオン移動に伴うエネルギー障壁を利用し,これまでに類のない誘電分子材料の構築を目指す. 初年度は,イオン包接環状化合物としてクラウンエーテルを選択し,材料作製を行った.その結果,リチウムイオンチャネル構造を有する2つの塩,Li2([18]crown-6)3[Ni(dmit)2]2・4H2O(1)およびLi2([15]crown-5)3[Ni(dmit)2]2・2H2O(2)の獲得に成功した.これら塩の交流電導度測定を行ったところ,(1)塩では伝導率が2.4×10-7 S/cm,(2)塩では3.6×10-8 S/cmと見積もられた.現時点で,(1)塩の伝導率が(2)塩よりも高く観測された原因として,(1)塩のイオンチャネルのサイズが大きいためと推測している.そこで次展開として,(1)塩,(2)塩ともに固体Li-NMRの温度依存性を測定し,Li+伝導の有無について確認する.この際,結晶水を重水に置換し,水分子の動的効果に関しても同時に測定することで,イオン伝導機構の解明を目指す. また,cucurbit[n]urilと金属イオンとを組み合わせた新たなリボルバー型分子の開発も行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を達成するためには,(1)材料作製及び調査,(2)誘電容易軸(強誘電軸)の自由選択・制御,(3)イオン置換による自発分極制御,の段階を経る必要がある.現時点で,段階(1)材料作製及び調査に関しては概ね終了し,段階(2)に取り掛かっている.また,段階(3)に関しても既に着手し,単結晶の獲得に成功しているなど一定の成果が得られている.このことから,研究推進の速度は当初の予定通りであり,概ね順調であると考えられる.また,本研究を遂行する上で,結晶内での局所的なイオン移動が発現する物質が発見されるなど,新たな展開に繋がる結果が得られている点も特記すべき成果と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を達成するためには,(1)材料作製及び調査,(2)誘電容易軸(強誘電軸)の自由選択・制御,(3)イオン置換による自発分極制御,の段階を経る必要がある.現時点で,段階(1)を達成し,段階(2)および(3)に取り掛かっているため,継続して研究を遂行する予定である.具体的には,高温で金属イオンのディスオーダーが観測された試料を用いて,イオン移動面に平行な各方向の誘電性を測定する.得られた情報から結晶内でのイオン移動速度とイオン凍結温度を見積もる.一方,多価金属イオンを導入した試料を合成し,自発分極の系統的調査を行う.具体的には,磁場中誘電率測定,磁場中結晶構造解析などを行い,磁場-誘電特性を評価する.これらの結果を解析し,マルチビット分子メモリや分子スピンメモリ等のデバイス化に向けた足掛かりを得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで,合成した材料を用いた種々の電気物性評価を行ってきたが,現在,我々が有する測定機器では精密な測定結果が得られていない.そこで,次年度はより高精度の電気物性評価を行うために,これらに必要な機器を購入する.具体的には,高精度電流電圧源,高精度デジタルマルチメータ×2台,ナノボルトメータを購入する.また,当初の計画通り研究発表および論文投稿も行うため,これらの経費も計上した.
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Research Products
(40 results)