2011 Fiscal Year Research-status Report
強誘電体バンド・ドメインエンジニアリングによる新規光応答性機能開拓
Project/Area Number |
23655192
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 満 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30151541)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Aurivillius型層状酸化物 / ペロブスカイト型酸化物 / 強誘電性 / バンドギャップ / 強誘電性臨界温度 / リラクサー / Sc置換 / 光吸収 |
Research Abstract |
本年度は、これまでに系統的に研究されている結晶構造中に酸素八面体を含むペロブスカイト関連化合物、Aurivillius型層状酸化物、Dion-Jacobson型層状化合物を探索の中心とした。これらの探索のうち、強誘電体であると同時に可視応答性の光機能を付与するため、元素選択として、前記3つの化合物群に対してAサイトにBi, Ag, Sb, BサイトにFe, W, Nb, Sb, Taを100%あるいは若干量固溶するA2WO4およびBi2BO4を含む候補物質分を選定し、合成を試みた。これらのサンプルの光吸収スペクトルの測定から光学バンドギャップを見積もると同時に、強誘電性臨界温度(Tc)を測定した。まず、Aurivillius型層状酸化物(1)Bi2WO4、(2)Bi2-2xSr1-2xTa2-xScxO9 (x = 0.05, 0.10)、(3)Bi2.15-La0.15Sr0.7Ta1.85Sc0.15O9、 (4)Bi2+2xSr1-2xNb2-xScxO9、(5)Bi2La0.5Sr0.5Nb1.75Sc0.25O9を合成した。後半の4つの系は新化合物であり、強誘電性およびリラクサー特性を示すことを確認した。(2)(3)(4)の系は、B-サイトにd0カチオンであるScを置換することで、Tcが200℃程度上昇し、しかも、Psも増加することが判明し、電気絶縁性の高いこれらの系が、実用上・応用上さらに、存在理由が高くなることが判明した(一部は学会発表、論文発表済み)。(5)の化合物はAurivillius型層状酸化物ではまれなリラクサー挙動を示すことがわかった。(1)から(5)に加えて、室温以上でTcを持ち、かつ可視光域で光吸収が大きいPb(Fe2/3W1/3)TiO3-PbTiO3系単結晶を作製し、来年度の光起電力測定用試料とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本実験の目的は、強誘電体の絶縁性および強誘電性ドメインを利用した新しい応用分野である光応答に着目し、物質設計と物質合成を同時に行うことにある。この目的達成のため、初年度で、新規化合物群を新たに見いだすことができ、しかも、各種電気測定が容易となるTcの上昇と、電気絶縁性の高い物質を見いだすことができたことは、ある意味で予想外の結果であるが、物質設計の方向が極めて妥当であったことを証明している。まさに、萌芽研究の目的に沿っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、本研究は、想定していなかった、新物質を多数得るなど、予想外の多くの実験事実を得ることができている。今後も、この方針で研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、最終的には薄膜化によるデバイス作製を行うことを目的としている。研究室既存の薄膜作製装置をより高機能化して、目的とする物質を得やすくするため、計画を若干変更し、本年度予算を繰り越して、加熱装置とマスフローコントローラーを本研究費で組み込み、容易な薄膜作製を可能とする予定である。
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Research Products
(7 results)