2011 Fiscal Year Research-status Report
溶融アクア錯体を用いる電気化学活性オキソ酸遷移金属化合物ナノ結晶の合成
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23655193
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
獨古 薫 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70438117)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 水熱合成 / マイクロ波 / 電池 |
Research Abstract |
リチウムイオン電池用正極材料としてオリビン型構造を有するLiFePO4やLiMnPO4が注目されている。LiMnPO4の充放電レート特性を改善するためには微粒子化が有効であると考えられる。平成23年度は、水熱法によりLiMnPO4のナノ粒子を合成し、合成条件が生成物の粒子径と電池特性に与える影響について検討した。 出発物質として硫酸マンガン5水和物とLi3PO4を混合し、水とエタノールを任意の割合で混合した溶媒(3.5 mL)を耐圧容器(内筒容量 50 mL)に入れ、190度の恒温槽内で静置することでLiMnPO4の合成を行った。XRDにより結晶相の同定を行い、窒素吸脱着測定により比表面積を求め、平均粒子径を算出した。また、合成したLiMnPO4粒子にカーボンコーティングを施した。電解液に有機電解液を用いて、リチウム箔を負極としてコイン電池を作製し、温度30度にて充放電試験を行った。 前駆体に加えたエタノールの量と窒素吸脱着測定結果から算出した生成物の粒子径は、いずれの試料も平均粒子径は100 nm以下であるが、溶媒にエタノールを0.5 mL添加した場合に極小をとり、さらに添加していくと増大していくことがわかった。カーボンコーティングの炭素含有量は熱重量分析の結果、約5wt%であることが分かった。 LiMnPO4/Cの放電レート試験を行ったところ、いずれの試料も120~130 mA h/g程度の放電容量を示した。粒子径の小さな試料ほど電流密度増大に伴う容量の低下は小さかった。 微粒子化により、LiMnPO4粒子内のLi+拡散距離が短くなること、電極/電解質界面が増大すること、電極反応に伴う活物質の体積変化が容易になることがレート特性の改善に有効であったと考えられる。 また、平成23年度からマイクロ波を用いたLiMnPO4のナノ粒子の合成についても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、溶融アクア錯体中におけるオキソ酸遷移金属化合物ナノ結晶の合成法の開拓と結晶成長メカニズムを明らかにし、合成された微小結晶の形状や結晶配向性が、その電気化学特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 平成23年度は、溶融アクア錯体に少量の水やエタノールなどの少量の溶媒を添加し、溶媒の量や誘電率が生成する粒子のサイズや形状に及ぼす影響を検討した。その結果、溶媒量が粒子サイズに大きな影響を及ぼす傾向があることが分かった。また、得られた粒子の電気化学活性は粒子サイズが小さくなるに従って高くなることが分かった。また、計画通り、マイクロ波合成装置を導入し、ナノ粒子の迅速合成についても着手した。 よって、概ね当初の計画通り、研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
溶融アクア錯体法によるLiMnPO4以外のオキソ酸遷移金属化合物LiaMb(XO4)c (M = 遷移金属、X = Ge, Si, Sb, As, P)などの合成へ展開する。金属のアクア錯体には融点が低いものが多く、溶融させることが可能であるため、様々な金属のアクア錯体を原料とすることにより、様々なオキソ酸遷移金属化合物の微粒子の合成が可能であると予測される。さらには、オキソ酸遷移金属化合物中の遷移金属の一部を異種元素で置換した固溶体を合成することも可能であると考えられ、これによりオキソ酸遷移金属化合物の微粒子の電気化学特性の変化も期待される。 オキソ酸遷移金属化合物中の遷移金属の一部を異種元素で置換した固溶体の合成が出来た場合には、異種元素ドーピングが材料の電気化学特性に与える影響について検討する。ナノ粒子の電気化学特性は定電流充放電法により評価し、充放電容量、直流抵抗から結晶配向性や粒子の凝集状態が電気化学活性にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。 また、複素インピーダンス法を用いることにより電気化学反応過程を時定数で分割し、電荷移動抵抗、固体内リチウムイオン拡散抵抗を定量的に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナノ粒子の合成のための消耗品(ガラス器具、試薬)を購入することを予定している。 また、研究成果を電気化学会や電池討論会などの学会で発表る予定であり、旅費・参加費を支出する予定である。
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