2011 Fiscal Year Research-status Report
交流磁場のパルス化による磁性ナノ粒子を用いたがんの治療・画像化への挑戦
Project/Area Number |
23655204
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
楠元 芳文 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20094138)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
磁性ナノ粒子およびそれらのナノコンポジットの合成とがん治療への応用に取り組んだ。1ナノメートルは10億分の1メートルのことであり、粒子の大きさがナノメートルを単位として測定されるような小さなものをナノ粒子、それらの複合体をナノコンポジットなどと呼ぶ。がん細胞としてヒーラ細胞(ヒト子宮頸部がん細胞)を用いて、細胞死滅活性を調べた。酸化鉄のような磁性ナノ粒子に交流磁場を印加することで、温度を上昇させてがん細胞を死滅させることが出来る。これをハイパーサーミアという。薄い金で覆ったFe3O4ナノキューブを合成し、特性を詳しく調べた。そして、ヒーラ細胞に対するがん細胞死滅を調べた。交流磁場を印加することにより酸化鉄により発生する熱と金が光を吸収して発生する熱の協同効果によってがん細胞を100%死滅させることができることを発見した。仕組みも含めて詳しく考察した。Fe3O4とTiO2からなるナノコンポジットでは,光を照射して発生する活性酸素(TiO2から発生)と交流磁場を印加することによりFe3O4により発生する熱との協同効果も発見した。Fe3O4以外のγ-Fe2O3やα-Fe2O3についても交流磁場によるハイパーサーミアを見いだした。また,Fe3O4,γ-Fe2O3,α-Fe2O3からなる種々の混合磁性ナノ粒子を合成し,交流磁場によるハイパーサーミアを見いだした。Fe3O4磁性ナノ粒子の大きさを制御する方法の開発にも成功した。 磁性ナノ粒子を含む水溶液にパルス交流磁場を印加して、音波検出用のマイクロホン解析装置を用いて,音波の検出を実際に試みた。しかし,ノイズとしてパルス交流磁場自体が検出の邪魔になることが分かった。本研究の計画では,音波の検出の際の課題・問題点や条件等について明らかにする事になっていたので,次年度の研究用に新たに音波検出専用の磁場発生器を自作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連続交流磁場およびそれをパルス状化した磁場をかけることにより磁性ナノ粒子(Fe3O4,γ-Fe2O3,α-Fe2O3が中心)から発生する熱を用いたがん細胞(HeLa細胞)の死滅効果の基礎研究については,当初の計画以上に進展している。 パルス状化した磁場を用いた音波の検出については,問題点を明らかにすることができた。しかし,全体としては順調に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
連続交流磁場およびそれをパルス状化した磁場を用いた研究のうち,パルス状化した磁場を用いたがん細胞死滅の研究にも比重を移していきたい。 パルス状化した磁場を用いた音波の検出についても,可能な限り問題点の抽出やその克服法について取り組むこととする。 本研究法を用いたがん治療手法をマウスを用いたモデル研究に発展させるための努力にも力を注ぎたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に磁性ナノ粒子合成関係費およびがん治療関係費への使用を予定している。研究の状況によっては,マウスを用いたモデル研究費にも使用したい。
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