2012 Fiscal Year Research-status Report
エマルジョンを用いたポリウレタンの反応エレクトロスピニング
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23655209
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
青木 雄二 山形大学, 理工学研究科, その他 (30536199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUKUMARAN S.K. 山形大学, 理工学研究科, 助教 (70598177)
杉本 昌隆 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10361271)
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Keywords | エレクトロスピニング / ポリウレタン / コアシェル構造 / ナノファイバー / 高強度・高弾性 |
Research Abstract |
本研究は有機溶媒を使用しない系でポリウレタン(PU)の静電紡糸を行うことを目的とするものである。具体的には高分子水溶液中に分子量の低いPUプレポリマーをエマルジョンの状態で分散させ、これを紡糸することによってエマルジョン中のPUドメインの合一と架橋剤によって架橋させることで高分子化したのちに水溶性の高分子を溶かしてPUの繊維を得るというものである。この方法は、低分子試料を高分子の水溶液にブレンドし、ブレンド溶液の紡糸と低分子試料を架橋させることで高分子化することで目的の高分子繊維を得るという知見から着想を得たものである。以下にこれまでの経過をまとめる。 架橋剤を添加しない系において、極板間距離、PUプレポリマーの添加量、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液濃度が繊維形成に及ぼす影響の調査を行った。PVA水溶液にPUプレポリマーを混合したエマルジョンからはPUの繊維は得られず、連なった PU粒子を得るという結果に留まった。 続いて、エマルジョンに架橋剤の添加を行わない系で、PU粒子が連なった構造を得られた条件において、架橋剤を添加し、PUの繊維が作成可能か調査した。 エマルジョンに架橋剤を15wt%添加することにより、繊維状のPUを得ることができた。得られた不織布のフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)測定結果から、架橋反応が進行しウレア結合を生成していることが確認され、このウレア結合はウレタン結合に比べ凝集力の強いため、密で大きな凝集体を形成し、紡糸過程での伸張によりこの凝集体が引き延ばされ、PUの繊維形成へと繋がったと考える。 以上より、目的としていた有機溶媒を用いない方法で、低分子試料の繊維化には成功したと考える。しかし得られた不織布(PVA/PU繊維)は芯鞘構造を形成しているかの確認は出来ていないため、さらなる実験、解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において、PVA水溶液にPUプレポリマーを混合したエマルジョンを用いてエレクトロスピニングを行い、ドメイン部分のPUを合一させることにより繊維化を試みた。ドメイン部分の制御はドメイン・マトリクス間の粘度比を変化させることと、極板間距離を変えることにより、PU粒子が〝分散〟〝凝集〟〝連なる〟ところまでの制御は可能となったが、繊維状のPUを得るまでには至らなかった。 そこで平成24年度において、平成23年度中に明らかにした最も繊維に近い構造を得られた条件において、架橋剤を添加することにより粒子同士の結びつきを促進させ、PU繊維を得ることに成功した。しかし本研究の最終目標は芯鞘構造を有した繊維の作製であるが、その構造の確認までには至っておらず、今後さらなる実験、解析が必要であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた不織布が芯鞘構造を形成しているかの確認のため、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光(XPS)などを用いて構造解析を行っていく。もしこの結果が芯鞘構造を形成していなかった場合は、ドメイン部分の合一をより促進する条件において芯鞘構造の形成を目指す。具体的には、架橋剤の添加量を増やす、ドメインに用いているPUプレポリマーの分子量や重合時間を変えることによってドメイン部分の粘度を変える、雰囲気湿度や印加電圧を変化させる、などにより芯鞘構造の形成を試みる。また以上の条件においても芯鞘構造が得られなかった場合は、二重円筒のシリンジを用いて内側にPUプレポリマー、外側をPVA水溶液として紡糸を行い、芯鞘構造を目指していくことを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低粘度の溶液の粘弾性をより正確に測定するため、レオメーターの治具を購入する。また、二重円筒を用いたエレクトロスピニングを行う場合、使用する二重円筒シリンジの購入を検討している。 エレクトロスピニング法による研究に必要な機器や異なる分子量を作製する際に必要な試料などは消耗品であるので、これらを購入する。 情報収集のための学会参加や当研究を通じて明らかになった学術上新規で有益なデータを学会にて発表するために必要な旅費などを計上する。
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