2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655211
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
前田 寧 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60242484)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 近接場 / 表面プラズモン |
Research Abstract |
STM-表面増強ラマン分光光度計の試作を行った。具体的には、自作したラマン分光光度計とNanosurf社の走査型トンネル顕微鏡(STM)を組み合わせて表面増強近接場光ユニットを試作した。励起光として半導体励起固体グリーンレーザ(532nm)を用い、長作動距離対物レンズ(×50)でSTM探針の先端に集光した。放出されたラマン散乱光は同じ対物レンズで集光し、ダイクロイックミラーとロングパスフィルターを使って励起光を除去して後に光ファイバーを通して分光器に導入し、電子冷却CCD検出器 (-70 oC)で検出した。測定はスペクトル分解能1~5 cm-1で行った。 STMの探針として電解研磨した銀線を用い、その先端に誘起される表面プラズモンによるラマン散乱の増強と近接場効果を利用した。試料として銀板表面に吸着されたローダミンBを用い、探針をトンネル電流が観測される位置から退避させ、試料-探針間の距離とラマン散乱強度の関係を調査した。探針を1nm退避させるだけでラマン散乱の強度が急激に低下した。このことは、探針表面に励起される表面プラズモンの伝播範囲が1nm以下であり、それにより増強されるラマン散乱光の強度が、レーザ光が500nm程度の広い範囲に照射されていても、先端以外の場所から放出されるラマン散乱光の強度を大幅に上回っていることを意味している。このため表面増強近接場ラマン分光法では、STMに匹敵する空間分解能でラマンスペクトルを観測することができていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に書いた研究計画に沿って装置の試作を行うことができた。今後、実験データを積み重ね信頼性の高い結果を得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に試作したSTM-表面増強ラマン分光光度計についてZ方向およびXY方向に走査しながらスペクトルを測定および解析するためのソフトウェアを新たに開発する。また、原子間力顕微鏡(AFM)とラマン分光光度計を組み合わせた表面増強近接場光ユニットの試作も行う。また、ラマン散乱光を使う高速イメージングを可能とするために、表面プラズモンによるラマン散乱光の増強と狭帯域光学フィルターを通した高速高感度検出を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請していた恒温水循環装置を購入する必要がなくなったために23年度の研究費に残額が生じた。この研究費は光学部品と位置決め部品の購入に充て、試作装置の操作性と性能を向上させる。
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Research Products
(7 results)