2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村山 明宏 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00333906)
|
Keywords | 半導体 / 量子ドット / 表面プラズモン |
Research Abstract |
本研究においては、化合物半導体量子ドットに原子オーダーで長さを制御した分子鎖を結合させ、その反対側に金属ナノ粒子を結合させたハイブリッド量子ドットダイマー構造を作製する。そして、このハイブリッド量子ドットダイマーにおいて、金属ナノ粒子の局在型表面プラズモン電場により増幅された半導体量子ドットの光応答特性を明らかにすることを研究目的としている。 平成24年度は、昨年度に引き続き、内部に一定の大きさを持つ空孔構造を持つ高分子タンパク質の空孔にCdSやZnSなどの化合物半導体量子ドットを成長させた半導体量子ドット内包タンパク質とAuナノ粒子を分子鎖により結合させたハイブリッド量子ドットダイマー試料の作製の発光特性を顕微発光分光やピコ秒時間分解発光分光により研究した。 さらに、平成24年度には、電子線描画によりサイズが50~200 nmの様々な配列や形状を持つAuナノ構造を作製するとともに、Si量子ディスクおよびInGaAsやInAlAsなどのIII-V族化合物半導体自己組織化量子ドットと複合させたハイブリッド量子ドット構造を作製した。その結果、Si量子ディスクにおいては、可視領域の発光について2~3倍の強度増幅現象を確認した。一方、III-V族半導体の場合には、発光の強度が顕著に減少した(消光現象)。詳しいAuサイズや間隔、形状依存性の研究を行ったところ、半導体量子ドット発光の量子効率が低い場合にはAuナノ構造の局在型表面プラズモン効果により強度増幅現象が生じるが、量子効率が元々高い場合には増幅効果が限られる上にAuへのエネルギー移動が顕著に生じるため結果的に発光強度が減少することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、電子線描画によりサイズ、配列、形状を制御したAuナノ構造とSi量子ディスクやIII-V族化合物半導体自己組織化量子ドットを複合させたハイブリッド量子ドット構造を作製した。Si量子ディスクにおいて、Auナノ構造の局在型プラズモン効果により可視領域の発光強度増幅現象が確認できた。一方、III-V族半導体の場合には、量子効率が元々高いために増幅効果が限られ、一方Auへのエネルギー移動が顕著に生じるため結果的に発光強度が減少する現象を定量的に明らかにした。 これらの結果より、電子線描画を用いたリソグラフィーによりAuナノ構造のサイズや配置、形状などを意図的に制御することで、Auナノ構造の表面プラズモン効果を定量的に明らかにすることができた。特に、半導体量子ドットの材料を変えることで、表面プラズモン効果が量子ドット発光過程に与える影響が大きく異なることを見出した。この現象は、量子ドット本来の持つ発光量子効率の違いに依存した、プラズモンの電場増幅効果と金属へのエネルギー移動効果の競合により定量的に説明できる。したがって、これらの知見は、今後のハイブリッド量子ドットダイマーの研究において重要な設計指針を与えている。また、実用的な観点からは、太陽電池や将来の集積回路光インターコネクションなどへの応用が期待されるSi量子ディスクに対してAuナノ構造によるプラズモン発光増幅効果を確認しており、プラズモン電場の分布や強度の制御により、より効率の良い光応答特性が得られれば興味深い。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた知見として、量子ドット本来の発光量子効率と金属ナノ構造の発光増幅現象の定量的な関係を明らかにすることができた。また、太陽電池や将来の集積回路光インターコネクションなどへの応用が期待されるSi量子ディスクに対して、Auナノ構造によるプラズモン発光増幅効果を実現した。そこで、Auナノ構造の配列を工夫することにより、プラズモン電場の分布や強度を制御し、より効率の良い光応答特性が得られるように研究を進めていく。また、発光の顕微ピコ秒時間分解分光システムを開発し、プラズモン電場の効果を受けたハイブリッド量子ドットダイマーの発光ダイナミクスを明らかにする。 以上により、特定の吸収帯域を持つ半導体量子ドットと金属材料やその粒子径に依存したプラズモン吸収を持つ金属ナノ粒子両者の結合距離を考慮した、量子ドットの発光効率やエネルギー移動による発光寿命に対する統一的な解釈を得る。すなわち、半導体量子ドットの光応答において、励起光電場と発光電場に対する局在型表面プラズモン効果と、半導体量子ドットから金属ナノ粒子へのエネルギー移動効果の両者を正確に制御し、半導体量子ドットの発光強度やそのピコ秒ダイナミクスを最大効率化するための指針を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究推進方策にもとづき、引き続き、各種ハイブリッド量子ドットダイマー試料の作製と顕微発光分光などの分光計測を推進する。また、これまで得られた知見を総合して、ハイブリッド量子ドットダイマーの持つ新しい光機能性についてまとめていく。そのため、リソグラフィー薬品類や金属原料、光学部品などの消耗品を購入する。その他、研究成果の発表のための旅費や論文印刷費が必要となる。
|
Research Products
(3 results)