2011 Fiscal Year Research-status Report
スピントロニクス素子におけるスピン反転の中間状態観測とその制御経路の探索
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23656006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 哲郎 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 教授 (00271990)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁気トンネル接合素子 / MTJ / スピンダイナミクス / スピン反転過程 / スピン制御 / 電子トンネル / ナノエレクトロニクス |
Research Abstract |
これまでに培ってきたピコ秒単位での超高速電気的特性測定技術を用い、スピントロニクスデバイス中のスピン反転過程の観測を行い、デバイス中のスピン反転過程におけるスピン状態の中間的状態の存在を示唆する結果を得ている。 スピンデバイスは従来、スピンのアップ・ダウンの2状態を用いた2値が確定したデバイスとして扱われてきたが、このスピントロニクスデバイス中のスピン反転過程を解明することは、スピン反転における中間状態を利用した新たなスピン制御技術へつながると考えられる。さらに、スピン反転過程の観測と解析は、スピンダイナミクス物理に新たな光を当て、この分野に新たな研究領域を拓く可能性を有している。 平成23年度は、超高速電気的特性測定手法を本格的にスピントロニクスデバイスのスピン反転過程の観測へ適用し、スピン反転における中間状態の観測とその制御指針提案を目指した。具体的には、次世代不揮発性メモリの代表格であるスピン注入伝達式磁気トンネル接合素子を主な舞台とし、その磁化反転過程の観測を行った。これによりスピン反転の中間状態に対する理解とその発現条件を探求し、下記の成果を得ると共に、スピン反転過程の中間状態の顕在化条件の探索も開始した。(1)超高速電気特性観測技術を用いて、スピントロニクスデバイスにおけるスピン反転過程の観測を行い、そのスピン反転過程を電気的に観測することに成功した。(2)スピン反転過程の中間状態の抽出を目指し理論的解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、超高速電気的特性測定手法を次世代不揮発性メモリの代表格であるスピン注入伝達式磁気トンネル接合素子の磁化反転過程の観測へ適用し、(1)高速電気特性観測技術を駆使したスピン反転過程の観測、(2)スピン中間状態に関する情報の抽出、(3)スピン反転過程の中間状態の顕在化条件の探索を実施する計画で研究を進めた。 上記課題(1)においてはスピン反転過程における中間状態解明の端緒と思われる結果を得ている。また、(2)スピン中間状態に関する情報の抽出と(3)顕在化条件の探索においても、理論構築を進め、当初意図した成果が出つつある。 従って、本研究は予定通りに順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、引き続き、スピン注入伝達式磁気トンネル接合素子におけるスピン反転過程の観測とその中間状態の物理の解明を進め、得られた知見を基に、中間状態の特徴を踏まえたスピン反転の経路を設定し、それを実現するための電流・電圧の条件を探求する。具体的には以下の項目に取り組む予定である。(1)スピン注入伝達式磁気トンネル接合素子における中間状態の観測と分類。前年度までに得た知見を基に、スピントロニクス素子のスピン反転における中間状態の特徴とその状態の得やすさを抽出、解析し、分類を行う。(2)中間状態の分類に基づく反転経路の設定。上記(1)で得られた結果に基づき、さらなる測定と解析を進め、スピンを安定に反転させるための反転経路の設定を行う。(3)所望の反転過程を得るための条件探索と検証。上記(2)をもとに、所望の反転経路を得るための具体的条件を探索し、スピン反転の制御指針を提案を行う。(4)制御指針の一般化。得られたスピン反転のための制御指針をスピントロニクスデバイス一般の場合へ拡張することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、スピン反転過程の超高速電気的特性の測定を行うための、高速な微小信号を明確に得るための測定用プローブ、プローブチップなどの測定用治具および電子部品の購入にあてる。これらは、高性能であるため、その取り扱いに慎重を要する繊細な消耗品である。また、1~2回の国内、国外の学会での成果発表を行うことを計画している。
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