2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピントロニクス素子におけるスピン反転の中間状態観測とその制御経路の探索
Project/Area Number |
23656006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 哲郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00271990)
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Keywords | スピントロニクス / スピン反転過程 / スピン注入伝達式磁気トンネル接合素子 / スピンダイナミクス / 電子トンネル / MTJ素子 / 高速電気信号測定 / ナノエレクトロニクス |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者が培ってきたピコ秒単位での超高速電気的特性測定技術を用いて、スピントロニクスデバイス中のスピン反転過程の観測を行い、スピン反転における中間状態の観測と、その制御法の提案を目指し行われた。平成23年度は、超高速電気的特性測定手法をスピントロニクスデバイスのスピン反転過程の観測へ適用し、スピン反転における中間状態の観測に挑戦した。具体的には、次世代不揮発性メモリの代表格であるスピン注入伝達式磁気トンネル接合素子を主な舞台とし、その磁化反転過程の観測を行った。その結果、スピン反転過程における中間状態とおぼしき状態を電気的に観測することに成功した。さらにその物理描像を明らかにするための理論的解析を進めた。 平成24年度は、引き続き、スピン反転過程の観測を進め、スピン反転過程における中間状態の解析を実験・理論両面から行い、所望の反転状態を得るための電流・電圧の条件を探索した。加えて、スピン注入伝達式磁気トンネル接合素子において得られたスピン反転の制御指針をスピントロニクスデバイス一般の場合へ拡張するための検討を行った。 本研究により、スピントロニクスデバイス中において、スピンはその反転過程において多様な中間的状態を示すことが明らかとなった。スピンデバイスは従来、スピンのアップ・ダウンの2状態を用いた2値が確定したデバイスとして、扱われてきたが、この結果は、スピントロニクスデバイス中のスピン状態が単純な2値として一意的に定まるものではないことを、明らかにしたという意味で意義が大きい。これは、スピン反転における中間状態を利用した新たなスピン制御技術へつながると考えられる。加えて集積回路への展開も行った。今後この萌芽研究で得られた知見を基に、スピン反転過程の観測と解析を継続し、スピンダイナミクス物理に新たな光を当て、この分野に新たな研究領域を拓くべく研究を発展させていく。
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