2011 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞特異的磁気ナノ微粒子のハイパーサーミアへの応用
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23656013
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
一柳 優子 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90240762)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ材料創成 / 微粒子 / ハイパーサーミア / 機能化 / ナノ医療 / がん |
Research Abstract |
1.研究の目的:金属塩化物とメタケイ酸ナトリウムの水溶液を湿式混合する独自の製法で磁気ナノ微粒子を生成し、磁気的性質を明らかにし、官能基を修飾しがん細胞選択性を持たせる。この微粒子をハイパーサーミア(温熱療法)へ応用するために微粒子の交流磁場による発熱特性を評価する。2.サンプル作製:ハイパーサーミア用媒体として有用と思われる磁気微粒子を生成した。特に鉄(Fe)酸化物に亜鉛(Zn)をドープした系、さらにマグネシウム(Mg)をドープした系、また鉄とニッケル(Ni)を含むフェライト系の物質について、単相のサンプルを作製し、粒径制御、組成の調整をおこなった。3.構造評価と磁気測定:ナノサイズのサンプルについてXRD, TEM, FT-IRなどの評価と放射光を利用した局所構造の解析を行った。各サンプルについて、直流(DC)および交流(AC)の磁化測定を詳細に行った。特にこの系の発熱機構は主にネール緩和による発熱が支配的と考えたため、交流磁化率の虚数成分に注目し、試料の最適化を行った。交流周波数100Hz, 交流磁場1 Oeにて測定したところ、FeZn系微粒子では予想に反し交流磁化率の虚数部分に明瞭なピークが得られず、強磁性成分の影響がある可能性が考えられる。Ni-ferriteにZnをドープした系では、Znのドープ量の増加とともに、交流磁化率の虚数成分のピークが室温付近に現れることがわかった。生体適合性の高いMg系ではZnのドープ量の増加に従い、直流磁化の値が増加した。4.発熱測定:各試料の交流磁場による温度上昇を測定するため、温度上昇測定装置の構築を行った。この装置を用いて温度上昇を測定した結果、試料によっては15度から20度の温度上昇が観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サンプルについては狙った試料を単相で得ることができ、ナノサイズの評価も行うことができており、十分な達成度を得ることができている。サンプルの種類については、まだまだ試作する余地があるので今後の展開も期待できる。交流磁化率と温度上昇については予想とは異なる実験結果も得られているので、この分析を詳細にしていくことが次年度からの課題である。初年度の達成度は良好といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
より多くの種類のサンプルを生成し、交流磁化率と上温測定のデータを蓄積していく。サンプルの熱容量もあわせて測定することで、熱散逸量を定量的に算出する方法を確立する。磁気的性質と熱散逸量の関係を分析していく。また、体内に導入することを想定し、サンプルのみならず、寒天中や肉片中での温度上昇を測定する。さらに、がん細胞を用いて細胞死を観察できるようなシステムを構築したい。これまでの成果について、国内外の学会にて発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、コニカルチューブ、ガラス管、試薬などのほか、高価でなければ細胞も購入したい。これまでの成果を発表するために、4月に米国で行われるナノ構造の国際会議に招待講演を依頼されているため、外国旅費として使用したい。また6月に大阪でナノ学会第10回大会が開かれ発表する予定であるので、旅費を使用する予定である。東北大学医学研究科との研究打ち合わせにも旅費を使用する予定である。
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