2012 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞特異的磁気ナノ微粒子のハイパーサーミアへの応用
Project/Area Number |
23656013
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
一柳 優子 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (90240762)
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Keywords | 磁性体 / ハイパーサーミア / がん温熱療法 / 交流磁化率 / ナノテクノロジー / DDS / 局所構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は金属塩化物とメタケイ酸ナトリウムの水溶液を湿式混合する独自の製法で磁気ナノ微粒子を生成し、磁気的性質を明らかにし、官能基を修飾しがん細胞選択性を持たせる。この微粒子をハイパーサーミア(温熱療法)へ応用するために微粒子の交流磁場による発熱特性を評価することであった。 1.サンプルの作成と選択: ハイパーサーミア用媒体として有用と予想した系、特にマグネタイト(Fe3O4)にコバルト(Co)イオンをドープしていくFe-Co-O系について、Coの組成や粒径を制御しながら試料を作成した。粒径は6.3 nm から21.2 nmまで焼く10種類のサイズをそろえた。組成はFe3-xCoxO4において x = 0, 0.3, 0.5と変化させた。XRD, XRF, TEM, FT-IRなどの測定から単相のスピネル構造でCoのドープ量もほぼ仕込みどおりであることを確認した。 2.磁化測定: 前年度までの実験結果より、本微粒子の発熱機構は主にネール緩和による発熱が支配的であることが明らかになったため、交流磁化率の虚数部に注目し、周波数依存性、温度依存性、粒径依存性を詳細に調べた。上記組成のうちx=0.3のサンプルの、各粒径別の交流磁化率虚数部(χ")の温度変化では、7.5 nmのものが室温付近に最大ピークを持つので、この試料が最も発熱すると予想できる。 3.発熱測定: 構築した装置で交流磁場下での昇温特性を測定したところ、磁化測定の結果から予想したとおり、7.5 nmの試料が20度程度の温度上昇を示した。数種の試料の熱散逸量を定量化し、比較して最適化を行った。シャーレを磁場中に置いてin vitroの実験が行えるようコイルの改良も行った。 4.MRI造影剤: MRI造影効果を調べるため鉄酸化物微粒子をアガロースに分散させ初期測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.試料生成については着実に成功しており、今年度から組成評価も蛍光X線を用いてより明瞭に行うことができるようになった。粒径の見積もりも新たにCSDA(結晶構造解析ソフト)を用いてより正確に算出できるようになった。生成と評価については予定を上回る100%以上の達成度となった。 2.磁化測定の振る舞いから推測したように、Fe-Co-O系試料では交流磁場下でがん細胞を死滅させるに十分な温度上昇が得られた。新たに磁化の結果から予想できない発熱結果も見られ、別の理論を考察する必要性も出てきた。in vivoの実験はできていないが、寒天を用いた生体擬似サンプルでは粉末状態の約1/3程度の発熱量であることがわかった。in vitro用に実験装置の改良は行っており、細胞ではハイパーサーミアの効果が実証できつつある。 全体としてはおおむね目標は達成してきており、不足部分はin vivoの実験であり、今後、共同研究者の協力を得て実行してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.物理的解析部分については、よりデータを分析し、Cole-Cole plotやアレニウスplotにより磁気緩和現象と熱散逸の関係を明らかにしていきたい。また、ネール緩和以外の発熱要因も検討していく必要が出てきた。 2.改造し、構築したin vitro用の細胞死の観察により、磁気ハイパーサーミアの効果の再現性を確認し、統計的にも実証していく。できればマウスを用いたin vitroの実験を行いたい。マウスは当研究室では確保できないため、この部分がもっとも問題となる。研究協力者である埼玉医科大の千本松准教授と日程を調整しつつ推進することで対応したい。 3.本微粒子はMRIの造影効果についても期待できる初期結果が得られた。MRIの理論は非常に複雑で磁気パラメータのどの部分が効果に影響するかわかっていない。東北大学でシグナルを測定してもらいつつ、関係を明らかにしていきたい。MRIで観察しつつ、発熱ができれば、より多機能を持つ微粒子の開発につながる。 4.さらなる機能を追加するために、薬剤の修飾を試みる。当該年度までにいくつかの官能基の修飾方法は確立しており、この官能基を利用して、さらに薬剤を修飾することを検討している。薬剤としては抗がん剤として知られているMTXを考えており、この構造と類似している葉酸の効果的な修飾方法を確立して臨みたい。また、医療に応用する上では分散性が非常に重要となるため、分散性の向上を考案する。分散剤として数種類を検討中で、粒度分布を測定するなどしてこれらの効果を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Synthesis of Gd2O3 nanoparticles for MRI contrast agents2012
Author(s)
N Sakai, L Zhu, A Kurokawa, H Takeuchi, S Yano, T Yanoh, N Wada, S. Taira, Y Hosokai, A Usui, Y Machida, H Saito and Y Ichiyanagi
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Journal Title
Journal of Physics: Conference Series
Volume: 352
Pages: 012008
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Fe3-xCoxO4(x = 0.3, 0.5)ナノ微粒子の磁気特性及び磁気ハイパーサーミアに向けた発熱評価2013
Author(s)
竹内宏賢, 黒川瑛宣, 矢納拓弥, 矢野真也, 小沼一紀, 近藤貴哉, 三池和成, 宮坂俊樹, 海藤翔太, 蜂巣将也, 森一将, 一柳優子
Organizer
日本物理学会第68回年次大会
Place of Presentation
広島大学
Year and Date
20130326-20130329
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