2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑原 裕司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00283721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤井 恵 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50437373)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 有機発光ダイオード / 局在表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
本研究の目的は、薄膜有機発光ダイオード(Organic light emitting diode:OLED)に、サイズおよび形状を制御した金ナノ粒子を組み込むことにより、局在表面プラズモン共鳴を利用した著しい発光増強効果を目指すものである。本年度は、赤色OLEDの発光増強に関して実験を行いその効果を実証した。局在表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance:LSPR)による発光増強を発現するために、発光分子波長と金ナノ粒子の表面プラズモンの共鳴波長を整合し、さらに発光分子と局在プラズモン電場との距離を最適化するために、金ナノ粒子を陽極と正孔輸送層の間に挿入する構造を新たに提案した。本素子構造では、長軸と短軸のそれぞれの長さを規定して合成した金ナノロッドを、陽極上に挿入・散布し、発光界面と粒子間の距離の最適化を正孔輸送層の膜厚制御のみで制御した。発光特性評価から、赤色OLEDでは従来よりも約3倍の発光増強が確認できた。また発光メカニズムの検討として、同一素子内に形状の異なる金ナノ粒子を挿入することで、発光波長とプラズモン共鳴波長が一致する場合としない場合を比較することにより検討を行った。その結果、共鳴波長を持たない金ナノ粒子を挿入した場合には発光増強が全く見られず、このことから発光増強のメカニズムとして、内部量子効率の増加によるものであることを実験的に実証した。 本研究は、局在表面プラズモンによる発光増強現象をOLEDに応用した世界初の例であり、化学的に安定な金ナノ粒子を用いることで塗布プロセスにより作製可能であることから、現行のOLEDが抱える発光効率や素子寿命問題の解決に貢献できるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要で示した通り、当初の目的に対して順調にその成果を上げてきた。本研究の成果発表に関しては、応用物理系の速報誌Applied Physics Expressに掲載された(T. Tanaka, Y. Totoki, A. Fujiki, N. Zettsu, Y. Miyake, M. Akai-Kasaya, A. Saito, T. Ogawa, and Y. Kuwahara, "Enhanced Red-Light Emission by Local Plasmon Coupling of Au Nanorods in an Organic Light-Emitting Diode", Appl. Phys. Exp., 4 (2011) 032105)。また学会においてもその成果を公表した。その成果がもととなり、国内での依頼講演や社会人研究者向けの講義などの多数の依頼をうけたこと、また企業との共同研究がスタートするなど、本研究成果の実用・応用展開に対して、非常に注目度が高いことが分かった。来年度以降に挑戦する、同一素子構造を用いた色相制御に関しても、十分な準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在提案されているOLEDの色相制御方法は、塗り分け方式、カラーフィルタ方式、色変換方式などがあるが、どの方式においても作製方法の困難さや効率の悪さなどの問題点を抱えている。来年度は、LSPR発現条件の一つである、発光増強効果の共鳴波長依存性を利用することで、OLEDの色相制御を検討する。この試みの最も特徴的な点は、まず、OLEDとして複数の色調を発現するまったく同一の素子構造を用いることを前提とし、素子中に挿入する金属ナノ粒子の種類を交換することのみで、注目する波長の発光増強、すなわち選択的な色の取り出しを実現させることにある。現状では、赤色発光と緑色発光が混在する素子(肉眼では黄色発光が観測される)の作製に成功しており、本素子に、緑の共鳴波長を持つ金ナノスフィアと、赤に共鳴する金ナノロッドをそれぞれ挿入することにより、発光増強による色相制御を試みる。 また、今後の発展としてRGBの制御のために、青色OLEDの増強効果が望まれる。青色発光の増強のためには、局在表面プラズモンの励起波長を青色に適応しなければならないが、残念ながら、金ナノ粒子はプラズモンの波長領域から青色には適していないが、他の金属ナノ粒子たとえば銀ナノ粒子を用いるなどして青色発光増強に対応することが可能であると考えており、研究進展によっては、RGBすべてのプラズモン増強効果の検証を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おもに素子構築や、金ナノ粒子合成のための有機材料を購入する。また、素子の表面観察のための走査トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡の、探針及びカンチレバー購入も行う。 また、成果発表のための国内旅費(海外の学会参加は予算消化の具合により検討する)に使用し、論文投稿のための英文校閲料などの支出も考慮に入れる。 次年度使用予算発生について、研究の進捗状況に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額に誤差が生じたが、研究は計画通りに進めており、予算に関しては前年度の研究費も含め、交付決定当初の予定通りに執行するよう計画している。
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