2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656024
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鶴岡 徹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20271992)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 原子スイッチ / 高分子 / フレキシブルデバイス / インクジェット印刷 / ナノイオニクス |
Research Abstract |
市販のピエゾ式インクジェットヘッドに,基板加熱機構,電動ステージ,液滴および基板表面観察用CCDカメラ等を装備したポリマー印刷装置を自作した。まず,ポリエチレンオキシド(PEO)の塗布条件最適化を行った結果,最も大きいノズルサイズのインクジェットヘッド(3nL)を用いたときの最大塗布可能分子量は2万であった。この結果を元に,PEOと数%の過塩素酸銀をアセトニトリルに溶解させた高分子電解質溶液を作製し,インクジェットヘッドの電圧印加条件を決定した。次に,ポリエチレンナフタレート(PEN)基板上に白金電極を形成し,その上への電解質溶液の最適な塗布条件を探った。その結果,PEN基板と白金電極の表面エネルギーの大きな差により,基板上に広がった電解質溶液は乾燥過程で白金基板上に凝集することがわかった。この表面エネルギーの差を利用すれば,白金電極を進むように電解質膜を塗布できる。この電解質膜上に銀電極を蒸着して素子を作製した。素子はバイポーラ型の抵抗スイッチ動作を100回以上示した。異なる金属基板の組み合わせに対する結果から,観測された抵抗スイッチは,PEO中の銀イオンの伝導と固体電気化学反応による金属フィラメントの形成と溶解に起因すると考えられる。我々はこの素子を,ポリマー原子スイッチと呼んでいる。スイッチ動作電圧は真空中よりも大気中の方が少し低くなった。これはPEOの水分吸収の影響が考えられる。さらに,PEN基板を曲げてもスイッチ特性は変化しないことを確認した。これはポリマー原子スイッチがフレキシブルエレクトロニクスに応用可能であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラスチック基板上へのインクジェット印刷を用いた塗布により,ポリマー原子スイッチの作製に成功し,そのスイッチ動作を確認した。これは当初計画した初年度の研究計画の80%を達成したと言える。PEN基板の曲げ半径に対するスイッチ特性の詳細な評価は現在行っている。白金基板上への電解質膜の塗布は必ずしも100%成功するものではなく,最終的な塗布膜の形状を決定する要因を未だ把握しきれていないことは課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,塗布膜の形状を決める要因の特定とその制御を試みながら素子の作製効率を上げる。それと並行して基板の曲げに対するスイッチ特性の安定性を評価する。その後,より詳細なスイッチ動作機構を探るため,スイッチ動作の温度依存性の測定やインピーダンス分光測定を行う予定である。さらに,3端子動作のために必要な電極形成をPEN基板上にどのように行うかプロセスを検討する。3端子素子作製とその動作確認が本研究課題の最終目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は,予備のインクジェットヘッド,電解質溶液をヘッドに充填するために使用しているコンプレッサーのモーター交換等を消耗品費として計40万円を計上する。また,国内旅費として20万円,論文の投稿・掲載料として20万円を計上する。
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Research Products
(4 results)