2011 Fiscal Year Research-status Report
金属ガラスフラックスを介したSiC単結晶の気相成長法の開発
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23656028
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 祐司 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (60302981)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | SiC / フラックス成長 / 薄膜 / 金属ガラス / エピタキシー |
Research Abstract |
H23年度は、まず始めに、SiC単結晶薄膜作製のフラックス探索に利用するため、既存の真空レーザー顕微鏡の加熱方式を、従来のセラミックスヒーターに代わってNd:YAGレーザーを用いた加熱方式に改造を行った。レーザー加熱は、試料背面からレーザーを集光し、照射することで、試料のみを効率よく加熱できるのが特長である。昇温試験では、1600℃まで加熱し、そのときの真空度は10-6Torr以下に保たれていることを確認した。また、レーザーをoffした場合、5min以内に500℃以下まで急冷することができ、金属ガラスフラックスの高温での挙動をクエンチして、その組成やぬれ性の詳細を調べることが可能となった。次に、この高温真空レーザ顕微鏡を用いて、SiCと金属ガラスとの高温での相互作用を調べた。金属ガラスには、Pd基のPd42.5Cu30Ni7.5P20を用いた。この金属ガラスをパルスレーザー堆積(PLD)法により、室温、真空下でSiC(0001)単結晶(Si面)基板上に堆積し、その融解挙動と反応性について真空下で観察を行った。金属ガラスの共晶組成融点531℃付近の540℃で、基板表面からはじかれるように、金属ガラス薄膜が液化し、液滴の凝集と液膜の明度変化を確認した。また、850℃で,SiC基板を浸食するようすが観察され、液滴まわりには、6角形状の浸食した跡が確認された。レーザー顕微鏡観察後、フッ硝酸で残留金属ガラスを除去し、SEM、およびAFM観察を行った。その結果、SEM、AFM観察においても、深さ300nm程度のエッチング跡が観察された。以上から、Pd基のPd42.5Cu30Ni7.5P20金属ガラスは、低温で液化し、SiCと反応し、溶解する作用があることが分かり、フラックス材料として有望であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
真空レーザー顕微鏡の高温観察仕様への改造が、想定したよりも問題なく実施することができたため、H24年度以降に計画していた金属ガラスの熱挙動観察を前倒しで実施することができたことから、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が共にオリジナルに研究・開発を進めてきたフラックス法と呼ばれる溶液プロセスを真空製膜に取り入れた"フラックスエピタキシー"法と低融点金属として組成的に安定な金属ガラスのパルスレーザー堆積(PLD)とH23年度開発に成功したレーザー加熱型の高温真空レーザー顕微鏡による溶融過程のその場解析技術とを組み合わせ、金属ガラスを液体フラックスとして用いた4H-SiC単結晶薄膜の相制御、低温・高速製膜に挑戦し、既存のSiC薄膜の作製プロセスとして知られる昇華法を代替する新規製膜プロセスの開発を目指す。具体的には、コンビナトリアルPLD薄膜手法により、3元相図薄膜を一括合成できるシステムを用いて、Cを溶解させる金属融液の3成分組成をデザインする。これまでの溶液成長の研究から良いとされているTiを含む金属ガラス組成近傍を中心に、第3成分をその他の遷移金属でSiよりも炭化物を形成しにくい、とされるMnやFe、Niをそれぞれ選択する。これらの3元相図薄膜をグラファイト基板上に作製し、ある温度条件下で処理後、SIMSを用いて、それぞれの融液組成でのCの溶解量を定量評価する。最終的には、レーザー顕微鏡での高温融解過程の観察結果と併せて、最適フラックス組成を決定し、4H-SiC 単結晶基板上に、このフラックス融液を用いたPLD法により、4H-SiC単結晶薄膜の作製を試み、その相同定と結晶性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度研究実施計画である真空レーザー顕微鏡の高温観察仕様への改造が、想定したよりも問題なく実施することができ、改造費の予算相当分がほとんど執行されなかったため、残額が生じた。次年度には、今年度の予算残額を真空レーザー顕微鏡に用いる高倍率の対物レンズの購入と真空ポンプのメインテナンス、高温用試料ホルダーの予備部品購入、および既存設備のSEMの試料表面の組成分析マッピングシステムの導入費用に充当する予定である。また、次年度分予算は、計画どおりに、試料作製のための基板材料であるグラファイト、およびHOPGの購入、金属ターゲット材料、SIMSを用いた深さC溶解分析の依頼測定費用に充当する。
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