2012 Fiscal Year Research-status Report
極性と組成を変調した面内周期構造を持つZnO薄膜の創製とその物性
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23656035
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
安達 裕 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30354418)
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Keywords | PLD / 極性制御 / 不純物添加 / 分極反転デバイス / 酸化亜鉛 / 透明導電膜 |
Research Abstract |
本研究は、極性と組成が変調した面内周期構造を持つZnO薄膜を作製し、レアメタル元素を使用しない低抵抗透明ZnO薄膜を実現することを目的としている。本年度は、Al添加ZnO薄膜中のAl濃度を変調させることにより、電子キャリア濃度の変調が可能であるかを調査した。また、Mg濃度とAl濃度が変調した面内周期構造を持つZnO薄膜を作製し、その電気特性を評価した。 まず、1mol%Al添加ZnOターゲットを用いたPLD法で、c(+)極性およびc(-)極性を持つAl添加ZnO薄膜を作製し、その電子キャリア濃度をHall測定により評価した。同じAl濃度のターゲットを使用して作製したにもかかわらず、c(-)極性を持つ薄膜の電子キャリア濃度は、c(+)極性を持つ薄膜の約1.3倍であった。これは、c(-)極性を有する薄膜のAl濃度が、c(+)極性の薄膜の濃度よりも高いことを示唆しており、(Mg,Zn)O薄膜中のMg濃度が極性に対して示す傾向と同じである。このことは、極性が周期的に反転した構造を作ることによって、バンドギャップとキャリア濃度が変調した薄膜を作製できることを意味する。 次に、4mol%Mgおよび0.5mol%Alを添加したZnOターゲットを用いたPLD法で、極性とMg、およびAl濃度が変調された面内周期構造を作製した。比較のために、同じターゲットを用いて、極性と組成が変調されていない薄膜も作製した。周期構造を持つ薄膜の抵抗値は2.6×10-3Ω㎝で、周期構造を持たない薄膜の抵抗値、3.6×10-3Ω㎝よりも若干低い値が得られた。これは、周期構造を持つ薄膜の移動度が、周期構造を持たない薄膜よりも移動度が高いためであった。このことは、周期構造が薄膜の低抵抗化に有効であることを示唆している。次年度はさらなる低抵抗化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、不純物添加による酸化亜鉛(ZnO)薄膜の極性反転現象を応用して極性と組成が変調した面内周期構造を持つZnO薄膜を作製し、レアメタル元素を使用しない低抵抗透明ZnO薄膜を実現することである。現在までに、極性とAlおよびMg濃度が面内変調したZnO薄膜の作製に成功しており、組成変調に伴うバンドギャップと電子キャリア濃度の面内変調も確認済みである。この点については当初の計画通りであり、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。変調構造の電気特性も測定されており、今後の低抵抗化を期待できる結果となっている。 一方、極性・組成の分布と薄膜の抵抗率などの電気特性との関係については、まだ十分なデータが得られていないため、当初の計画以上に研究が進展しているとは評価することはできない。最終的な目的である、従来よりも低抵抗な透明導電膜の実現を目指すために、最終年度では極性・組成の分布と薄膜の電気特性の関係についての調査を重点的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
極性と組成が変調した面内周期構造を持つZnO薄膜の極性・組成分布と薄膜の電気特性との関係を明らかにすることにより、従来よりも低抵抗な透明導電膜の実現を目指す。 また、分極方向が反転している粒子同士の界面での散乱が、分極方向が揃っている粒子同士の界面での散乱よりも、抵抗増大に寄与する割合が本当に多いかを確認することは、透明導電性薄膜の低抵抗化には非常に重要である。これを確認するため、ScAlMgO4などZnOと格子マッチングのよい絶縁性単結晶薄膜上にサイズの大きいc(+)極性グレインとc(-)極性グレインとのモデル界面を形成し、界面のI-V特性、C-V特性測定、透過電子顕微鏡(TEM)観察などを行い、界面構造・特性のキャラクタリゼーションを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は当該研究費で極性反転試料の断面TEM観察を行う予定であったが、極性・組成の分布と薄膜の抵抗率などの電気特性の関係について十分なデータが得られてから観察を行ったほうがより有効に研究費を使用できると判断したため、観察の延期を決定した。次年度、十分なデータを得てから観察するサンプルを選定し、断面TEM観察に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)