2011 Fiscal Year Research-status Report
原子間オージェを利用した特定表面原子に結合する原子の決定、吸着状態分析法の開発
Project/Area Number |
23656036
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
間瀬 一彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40241244)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オージェ電子分光 / 光電子分光 / コインシデンス分光 / 表面分析 / 原子間オージェ |
Research Abstract |
現在、特定の表面原子に結合する原子を決定する手法、結合状態を分析する手法は少ない。たとえば、シリコン(100)清浄表面に吸着した一酸化炭素(CO/Si(100))ではSiと結合している原子がCかOか、分子状吸着か、原子状解離吸着かを決定するには、振動分光と電子分光、理論等から総合的に判断する必要がある。本研究では原子間オージェ電子を検出して直接分析する手法を開発する。COのCとSiが結合している場合、C 1sをイオン化すると、Si 2p内殻電子がC 1s内殻正孔に遷移し、別のSi 2p電子が放出される原子間オージェが起きると期待される。Si 2p正孔はさらにカスケードオージェにより緩和して、4正孔を生成し、クーロン反発により、CO+が脱離すると期待される。そこで、C 1s光電子-原子間オージェ電子コインシデンス分光を行なえば、SiとCが結合しているかどうか直接検証できる。さらに原子間オージェ電子-光イオンコインシデンス分光を行なえば、COが分子状で吸着しているか、解離してC-Si、O-Siという原子状で吸着しているかを分析できる。しかしながら、このような原子間オージェ過程は気相分子では報告されているものの、表面では研究例が全くない。そこで、我々は、光電子と原子間オージェ電子、あるいは原子間オージェ電子と光イオンの同時測定を行なうことにより特定の表面原子に結合する原子を特定し、結合状態を分析する手法を開発を進めている。 平成23年度は高感度のオージェ電子-光電子コインシデンス分光、電子-イオンコインシデンス分光兼用分光器の製作を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度中に高感度型電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の製作をほぼ終えることができたのでおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度に製作したコインシデンス分光装置を用いて原子間オージェ過程に由来するオージェ電子の検出を試みる。最初の試料としてはSi(100)清浄表面上に作製した5Å程度のシリコン酸化膜(SiO2/Si(100))を用いる。本試料は超高真空槽内でSi(100)単結晶表面を通電加熱により清浄化したのち、高純度酸素ガスを導入して熱酸化することにより作製する。軟X線放射光(O 1s 測定ではhv = 575eV、C 1s 測定ではhv = 420eV)を照射して、表面から放出されるO 1s と Si 2p 間の原子間オージェ電子をASMAで検出し、O 1s光電子をCMAで検出する。O 1sとSi 2p間の原子間オージェ電子の運動エネルギーAeKEはAeKE=BE(O-1s)-2BE(Si-2p)-H-+R-φで与えられる。ここで、BE(O-1s)、BE(Si-2p)はO 1s、Si 2pの結合エネルギーであり、Hは2つのSi 2p正孔間の相互作用、Rは緩和エネルギー、φはアナライザーの仕事関数である。コインシデンス測定ではO 1s光電子シグナルでマルチチャンネルスケーラー(MCS)にトリガーをかけ、O 1sとSi 2p間の原子間オージェ電子のシグナルをMCSに入力することにより、O 1s - Si 2p原子間オージェ電子-O 1s光電子コインシデンス飛行時間スペクトルを得る。O 1s光電子とO 1s - Si 2p原子間オージェ電子は100fs以内の時間スケールで同時に放出されるので、オージェ電子-O 1s光電子コインシデンスシグナルは特定の飛行時間領域に現れる。シグナルが見つかったら、O 1sイオン化1回あたりのO 1s - Si 2p原子間オージェの確率を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、アナライザーの製作費が予定より少なくて済んだため、425,013円を次年度に繰り越した。次年度は試料基板、試料ガスの購入、装置の改良などの物品費に475,013円、国際会議The 11th International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentation (SRI2012)での成果発表の旅費に40万円、装置の性能評価の補助などの謝金に10万円、論文投稿料に5万円を使用することを計画している。
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