2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ・ベクトルホログラムによる高強度レーザーの全角運動量シンセシス
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23656041
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾松 孝茂 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (30241938)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非線形光学 / プラズマ光学 / 高強度レーザー |
Research Abstract |
光の「全角運動量(J)」は光波面の位相特異点に由来する軌道角運動量(L)と円偏光に由来するスピン角運動量(S)の量子力学的ベクトル和(J=L+S)で与えられる未開拓の新規光パラメータである。光の「全角運動量」を用いると、これまで制御不能であったプラズマなどの荷電粒子集団の指向性を光で自在に制御できる。一方、TWを超える極限的な光強度を示す高強度レーザーは、高次高調波発生、アト秒光パルス発生、など、新しい極限物理現象を次々と生み出している。これらの極限物理現象はすべて、レーザーとイオン・電子などの荷電粒子集団との多次元的相互作用によって起こる。本研究では、パルスレーザー光照射によって誘起されるプラズマ(レーザー誘起プラズマ)にレーザー光の空間位相分布と偏光空間分布(電場ベクトルの空間分布)をホログラム記録する(「プラズマ・べクトルホログラム」)。この「プラズマ・ベクトルホログラム」を用いて、1TWを超える高強度レーザーの「全角運動量」を自在に制御することを目的とする。 本年度はピコ秒・フェムト秒レーザーの二光束干渉によってできるプラズマ・ホログラムの書き込みと読み出しを行った。ガラスをターゲットとしてピコ秒・フェムト秒レーザーを用いて発生させたプラズマ・ホログラムは、ピコ秒パルスの場合、ポンプ―プローブ法により読み出せた。しかしながら、フェムト秒パルスの場合、スーパーコンテニュームをはじめとする他の非線形光学効果が激しく起こり読み出せていない。今後、パルス伸張やガラス以外の材料を用いることでプラズマ・ホログラムを読み出す条件を見出す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
10-20ピコ秒のパルス幅を有するNd:YAGピコ秒パルスレーザー(波長1064nm)を用いて記録したプラズマ・ホログラムでは記録が完了すると同時に強い自己回折効果が起こり、高次回折光としてホログラムを読み出すことができた。しかしながら、100フェムト秒のパルス幅を有するチタンサファイアフェムト秒パルスレーザーを用いてプラズマ・ホログラムを記録した場合、フェムト秒パルスレーザーの高いピークパワーに起因する様々な非線形光学効果(例えば、自己位相変調によるスーパーコンティニューム発生)が激しく起こり、自己回折効果による高次回折光を観測することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
チタンサファイアフェムト秒パルスレーザー(波長800nm)のピークパワーを低減し非線形光学効果を抑制するため、回折格子対から用いてサブピコ秒~数ピコ秒パルスまでパルス伸張する。さらに、Nd:YAGレーザーと同波長(波長1064nm)にするため、ホウ酸バリウムからなる光パラメトリック発生器および光パラメトリック増幅器を用いてサブピコ秒~数ピコ秒の光パルスを生成する。現在、ターゲットとしてシリカガラスを用いているが、非線形光学効果を低減するため、シリカガラス以外の低非線形材料(例えばガスジェット)など、プラズマ・ホログラムを数ピコ秒レーザーパルスで再生できる最適条件を材料面から探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
チタンサファイアレーザーのためのパルス伸張器として回折格子対、より密度の低い非線形光学材料としてのガスジェットなどの消耗品を購入する予定である。さらに研究の進捗状況に応じて、学会発表などの旅費として使用を考えている。
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Research Products
(4 results)