2011 Fiscal Year Research-status Report
原子気体の偏光分光信号を用いた線幅1Hz級レーザーの開発
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23656042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥井 寿夫 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | レーザー / 分光 |
Research Abstract |
本研究の目的である偏光分光法によるレーザー周波数の狭窄化の原理検証実験をルビジウム原子気体セルを用いて行った。光源として線幅2MHzの分布帰還形(Distributed feedback)半導体レーザーを用いた。ルビジウムセルは常温で、磁気シールド内に設置した。偏光分光はドップラーフリー配置で行い、ポンプ光によって誘起された円偏光複屈折によるプローブ光の偏光回転を平衡型ポラリメーターで測定した。この偏光分光信号をバイアスTを用いて半導体レーザー注入電流へ高速フィードバック(~10MHz)することにより、レーザー線幅を20kHzにまで狭窄化することに成功した。線幅の測定には、自己遅延ヘテロダイン法(遅延距離約1.5km)を用いた。計算の結果、得られた線幅はフォトディテクターにおいけるショット雑音で制限されていることがわかった。また、偏光分光法によるレーザー周波数弁別器の伝達関数が、Pound-Drever-Hall法のそれと同じく1次のバターワースフィルターと等価であることを理論的に示した。この手法をストロンチウム原子気体のスピン禁制遷移(波長689nm、線幅約7kHz)に適用した場合、1KHz以下のレーザー線幅が得られることを定量的に示した。理論と実験も含め、ここまでの結果はプレプリントサーバーに投稿し(arXiv:1201.1985)、またPhysical Review Letters誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、初年度から狭線幅(7kHz)のストロンチウムスピン禁制遷移を用いた偏光分光を行う予定であったが、ルビジウム原子(線幅6MHz)を用いた予備実験および動作原理に関する論文執筆に予想以上に時間がかかり、ストロンチウムに着手することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、ルビジウム原子(線幅6MHz)を用いた予備実験および動作原理に関する論文執筆に予想以上に時間がかかり、ストロンチウムに着手することができなかった。そのため、昨年度し使用を予定していた物品費の約半分を今年度に繰り越すことになった。今年度はストロンチウムの偏光分光信号を用いた1kHz以下までのレーザー線幅狭窄化を目指す。光源として外部共振器レーザーを購入し、簡便なヒートパイプを用いたストロンチウム原子の偏光分光を試みる。同時に、ヨウ素セルも偏光分光も試み、ストロンチウムの1S0 → 3P1遷移に最も近いヨウ素の吸収線を同定する。得られた偏光分光信号を光源にフィードバックする際、最適な位相フィルター等を導入し、広帯域かつ安定なフィードバックループを確立する。線幅測定のための光学系(自己遅延ヘテロダイン法)を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費を用いて、ストロンチウム原子気体用ヒートパイプを特注で作成する。反射防止膜付の689nm外部共振器を作成し、光アイソレータおよび電流電源、温度コントローラーを購入する。ヒートパイプによる分光法のバックアップとして、ヨウ素セルも購入する。分解能の高いレーザー線幅測定のために、1kmのシングルモードファイバーを購入する。
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Research Products
(1 results)