2011 Fiscal Year Research-status Report
中性子ビーム制御のためのホログラフィック中性子光学素子の創成
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23656045
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
富田 康生 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50242342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光学素子 / フォトポリマー / ナノ微粒子 / 中性子ビーム |
Research Abstract |
本研究は、中性子ビーム輸送技術と利用効率の大幅な向上と中性子干渉計や集光型小角散乱装置の測定感度向上を目指し、ナノ微粒子ーポリマーナノコンポジット材料へのレーザー光によるホログラフィック光重合で形成したナノ微粒子の空間分布から生じる中性子ビームのコヒーレント弾性散乱(回折)現象を利用して、中性子ビームの偏向(反射)などの制御を高効率かつ柔軟に行えるホログラフィック中性子光学素子の実現を目的とする。 当該年度においてはナノ微粒子ーポリマーナノコンポジットへの体積ホログラムの記録を行い、海外共同研究者のFally 教授とRupp 教授(ウィーン大学)の研究グループによる欧州の中性子ビームライン施設での概体積ホログラムからの中性子ビームの回折特性について詳細に検討を行った。以下にその研究実績について列記する。1.SiO2ナノ微粒子を用いたナノ微粒子ーポリマーナノコンポジット材料によるフィルム試料(膜厚100ミクロン程度)を作成し、緑色(532nm)レーザーを用いた二光束露光による格子間隔0.5ミクロンの格子間隔の透過型平面波体積ホログラム試料を作成した。その結果、概レーザーによる回折効率測定から屈折率変調が0.01に近い高コントラストの屈折率格子を実現した。2.概体積ホログラム試料を用いた冷中性子ビーム(波長1.7~2 nm)の回折実験を実施した。中性子ビーム回折効率の入射角度依存性を測定して、中性子ビーム偏向の効率、角度選択性、試料のコヒーレント散乱密度変調量を定量的に評価した。特に、試料の膜厚の制限を克服するためにPendellösung干渉効果を利用して試料を傾けることにより最大83%の回折効率を得ることが出来、全反射ミラーに近い動作を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.中性子ビームの回折測定において試料を傾ける必要性から大面積のホログラムを作成する必要があった。そこで、ビーム径2cmの二光束干渉露光を行ったが、当初懸念されていた光散乱も十分抑えられた低光散乱で高屈折率変調の格子間隔0.5ミクロンの体積ホログラムを記録することができたこと。2.Pendellösung干渉効果を利用して試料を傾けることにより中性子ビームの高回折効率を実現できたこと。特に、83%の回折効率は反射ミラーとして実用的に使用できる値であり、本研究の目的である中性子ビームの偏向(反射)、分岐、集光、変調、スイッチングなどの制御を高効率かつ柔軟に行えるホログラフィック中性子光学素子の実現の最初の段階としては十分満足できる結果であったこと。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度において83%の高反射率ミラー動作が実現できたので、今後は100%の回折効率を目指すためのより膜厚を増加した(例えば、200ミクロン)良質の体積ホログラムの作成を試みる。そのために、新しく考案したホログラフィック散乱を抑圧できる平面波体積ホログラム記録の方法を試みる。また、試料からガラス基板を除去したfree standing filmによる高反射率ミラーの実現も試みる。一方、分岐ビームスプリッター(例えば、中性子ビームの3分岐素子)の実現のため、角度多重記録法とスケジューリング記録法を併用した平面波体積ホログラムの角度多重記録を行いその光学的な評価を行い、中性子ビームによるその動作の実証を試みる。加えて、スピンビームスプリッターの実現に向け、Fe-Co、Fe-Ni などの磁性ナノ微粒子のフォトポリマーへの均一分散化と試料作成について検討を行い、平面波体積ホログラムを作成して光学的評価からナノ微粒子濃度分布コントラストを極大化する作成・記録条件を見出し、中性子ビームライン施設でその特性評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品として50万円以上のものの購入は計画していない。物品費としては主に、大面積で均一な記録ビームを実現するためのビーム整形用の光学系などの光学部品、精密ステージなどの機械部品、試薬類、電子部品などを予定している。旅費としては国内学会旅費を予定している。また、論文出版費もその他として計画している。
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Research Products
(8 results)