2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656050
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小島 磨 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415845)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 励起子 / 量子ビート / 超高速光スイッチ |
Research Abstract |
超高速光スイッチの実現を目指して、励起子準位間の干渉効果である励起子量子ビートに注目している。平成23年度は、膜厚110nmのGaAs薄膜を試料に用い、反射型ポンプ-プローブ法による測定から励起子量子ビートのダイナミクスを明らかにすることを試みた。本研究で対象とする励起子重心運動閉じ込め系では、縮退四光波混合法では量子ビートがいくつかの材料系で報告されているが、ポンプ-プローブ法ではほとんど観測されていない。縮退四光波混合信号が励起子の位相緩和を反映するのに対し、ポンプ-プローブ信号は、励起子数の緩和を反映するので、ポンプ-プローブ法による観測は、光スイッチ応用において重要なステップとなる。そこで、反射型ポンプ-プローブ測定において、回折格子とスリットを用いて、プローブ光のスペクトル幅を制御して測定した結果、明確に励起子量子ビートを観測することに成功した。このような励起子重心運動閉じ込め系での量子ビートは、本研究が初めての観測である。また、この量子ビートと運動量緩和を組み合わせることで、パルス幅程度の超高速応答を得られることも明らかにした。また、この量子ビートの出現が、いわゆる検出過程の問題(複数の振動の重なりにより振動構造が打ち消される)ではなく、スペクトル幅が広いプローブ光によって生成された複数の励起子ポラリトン間の破壊的干渉が問題であることを明らかにした。一方、ポンプ光のスペクトル幅を制御した場合においては、非共鳴励起下にもかかわらず、因果律が満たされないような実験結果が得られている。この結果については、現在、光場と励起子電場との結合に起因するものであるとして、考察を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光スイッチ特性を評価するための光学系を構築する一方で、それと並行してそもそもの励起子量子ビートの本質を明らかにすることに注力した。その結果、本研究で初めて励起子重心運動閉じ込め系で励起子量子ビートを観測できた理由を明らかにできた。また、ポンプパルスの制御に関しては、前倒しの実験となったが、因果律では説明できない実験結果が出現したため、理論的な考察を現在展開中である。これらは、新たに構築した光学系による量子ビートの光スイッチング特性の評価において、その基本となる物理的起源を明らかにするための重要な実験であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に構築した光学系において、励起子量子ビートの光スイッチング特性に関する評価を行う。特に、ダブルパルスの実験を行うことで、励起子量子ビートを利用する有効性について明らかにすることを目指す。また、ポンプ光のスペクトル幅を制御した場合の実験結果を理論的な観点から明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光学部品等を追加し、測定の精度と感度の向上を図る。また、学会発表および論文投稿関連に使用する。
|
Research Products
(36 results)